"Afro Latin Via Dakar" (5) : Idy Diop (part 2)

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"Le Sahel / Bamba" (Musiclub LPS-MUS-001, 1975)



 アルバム"Afro Latin Via Dakar" の紹介/セネガルにおけるラテン・サウンドというテーマから少し離れてしまいますが、イディ・ディオップ Idy Diop に関する話を続けます。



 前回紹介した "Idrissa Diop - Cheikh Tidiane Tall / Diamonoye Tiopite - L'epoque de L'evolution" のライナー(制作者の Adamantios Kafetzis による解説と、Idrissa Diop へのインタビュー、全21ページ)を2度読んでみたのだけれど、これが相当に充実した内容。個人的に長年知りたかったこともたっぷり書かれている。アフリカ音楽ファン、特にセネガルのポップ・ミュージックに関心のある方ならば全文必読だと思う。

 これから書こうとしていることに関する部分だけでも、ここからいくつか拾ってみよう(やや意訳)。

「セネガルでリリースされたレコードとカセットはほぼ全てコレクトした。(中略)本当に素晴らしいレコードはサヘルの BAMBA など3枚」

「サヘルというバンドはセネガルの音楽を永遠に変えた。サバールとサルサを初めて結びつけ、それがンバラの誕生に繋がった」

「サヘルのリードシンガー、イドリッサ・ディオップはセネガルの音楽が発展していく上でとても重要な人物だった。だから、Teranga Beat の最初の1枚を彼のコンピレーションに決めた」

「イディのラテン・サウンドは、チエルノ・コワテの助力があって生まれた」(以上、Adamantios Kafetzis)

「Dioubo のレコーディングでの最重要ミュージシャンは、今はオーケストラ・バオバブのサックスプレイヤーのチエルノ・コワテだった。」

「私たち(サヘル)がプレイしている頃には、ンバラという音楽はまだなかった。私たちが最初にそれを始めたんだ。ンバラはセネガルの伝統音楽であるサバールとラテン・ミュージックを結びつけたもの。サヘルがその最初のグループになったことはハッピーだし誇りにも思っている。当時はそのことを理解していなかったけれど」

「私たちはメディナのクラブ "SAHEL" でプレイしていた。ユッスー・ンドゥールもチョーン・セックもオマール・ペンもみんな聴きに来ていた。まるでオープンな音楽学校みたいだったな。毎晩ギグを演って、議論していたものさ」

「当時はたくさんの曲を書いた。ユッスー・ンドゥールのためにも書いたよ」(以上、Idrissa Diop)




 しばらくぶりにその Le Sahel のLP 盤 "Bamba" を聴いてみたのだけれど、確かに凄いサウンドだ。タイトル・ナンバーの 'Bamba' はプレ・ンバラの傑作。ウォロフのサバールに特有なラップ様の節回し、溌剌としたホーンズ、そして切れまくるオルガンの響き、等々、ユッスーらに先駆するサウンドが刻まれているという感触がひしひしと伝わってくるプレイだ。ラリー・ハーロウの 'Cardad' はそれとは対照的に痛快なラテン・チューン。この曲や 'Papa Ndiaye Deme' におけるリーダーの Cheikh Tidiane Tall のサイケでエキセントリックなオルガンも大きな聴きどころだろう。

 サヘルは1970年代後半のセネガルにおいてトップ・グループだというが、確かにそれだけのクオリティーを感じさせる。当時このサウンドに対抗できたのは恐らくバオバブくらいだったのではないだろうか。'Papa Ndiaye Deme' がバオバブの 'Papa Njaay' とそっくりなことからは、相互交流があった可能性も想像もしてしまう(録音は両者とも75年だ)。ただし、チエルノ・コワテはまだバオバブに加入していなかったので、彼の介在は考えない方がいいかも知れない(兄のイッサはバオバブのオリジナル・メンバーだけれど)。

 このレコードを入手したとき、これがとても重要な作品だと直感で理解できたのだけれど、ライナーの解説が正しいのであれば、セネガルのポップ・ミュージック史上でマイルストーンでさえあったのだろう。イディはその中心にいたのであるから、彼もまたセネガル音楽のキーパーソンだ。(これで昨日の答えになっているだろうか?)



 ライナーを読みながら Le Sahel の録音を聴いていると、書いておきたいことが次々に浮かんでくるが、今回はここまでにしておこう。

 ちなみにこのリイシュー盤 "Idrissa Diop - Cheikh Tidiane Tall / Diamonoye Tiopite - L'epoque de L'evolution" には、前回と今回取り上げたレコード("Dans Dioube" や "Bamba" など)から多数選曲されている。そして見逃せないのは、Adamantios Kafetzis が近年ダカールで発掘した Le Sahel の75年と76年の未発表録音が含まれていること。取りあえずネットで DL して聴いているところなので、このリイシューに関しては後日また何か書く機会があるかも知れない。

(それにしても、ラストの 'Gueth' なんかは、まるで初期の Etoile de Dakar だなぁ!)

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(続く。そのうち本題である "Afro Latin Via Dakar" の解説に進みます。)




Linernotes of Idrissa Diop (Teranga Beats)
"Afro Latin Via Dakar" (1)
"Afro Latin Via Dakar" (2)
"Afro Latin Via Dakar" (3) : Baobab
"Afro Latin Via Dakar" (4) : Idy Diop (part 1)





by desertjazz | 2011-07-08 00:00 | Sound - Africa

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