2011年 11月 11日
読書メモ:カズオ・イシグロ「日の暮れた村」
河出の『短編集』でカズオ・イシグロの「日の暮れた村」を再読。2001年に発表された作品なので、時系列的には長編5作目『わたしたちが孤児だったころ』の後に読むべきだったのだが、順を誤った。
確か数ヶ月前に読んだはずなのだが、その時得た印象は乏しかった。しかし、じっくり読み直してみて「恐い小説」だと感じた。人はどこか勘違いや思い違いをして生きてきた存在、そこにグサッと突き刺さってくるものを感じる。
自己評価と周囲のそれとが食い違っている様は、類似性と対称性をもって『浮世の画家』の小野を思い起こさせる。どことなくユーモアを含んだ毒味には『日の名残り』の執事と共通したものも感じる。最後に主人公フレッチャーの楽観で終わっているのも不気味だ。
そして、ここでは時空の歪みがはっきり感じられる。
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