2011年 12月 06日
読書メモ:『アルテス』創刊号!
アルテスパブリッシングの季刊誌『アルテス』、創刊号(Vol.1) の特集は「3.11と音楽」。「音楽はなにかの役に立つのか? 音楽家にはなにができるのか?」(P.4) と、震災後に多くの人の頭に浮かんだであろう問いを枕にして始まっている。この命題は、音楽を文学、芸術、アート等と置き換えた人も多かったのではないだろうか。
しかし、そうした答えの見出しにくい問題など評論家やミュージシャンの方々にお任せしよう、ただでさえ数々の難問に頭を痛める日々なので、せめて音楽くらいは好きなものをゆったり聴いていたい、というのが今の個人的な心境である。音楽についてあれこれ難しいことを考え出すと疲れ切ってしまいそうだ。
それでも、大石始さんと石田昌隆さんの記事(連載)が読みたくて買ってみた。折角だから冒頭の特集から順に読み始めたところ、興味深い指摘の連続で、特集部分(P.4〜121)をほとんど一気に読み終えてしまった。
震災直後には音楽を聴く気にならなかったなど、自分たちと同じような感覚だった人が多かったらしいことにどこかホッとするとともに、そこから示唆に富む考えを引き出しているあたりはさすがだと思った。個人的には、片山杜秀、坂本龍一、高橋悠治といった諸氏の発言が興味深く、これらを読むだけでも価値ある一冊だと思う。
全体的な基調は、震災後も音楽は変わらない、音楽にできることはない、音楽でなにかをやろうとする必要はない(それに、「がんばる」という言葉の捉え方や、「癒し」という言葉の安易さなど)といったもの。確かにそうだろうと思う。ただし、単なる否定で終わってはいない。そこに今回の特集の意味があるのではないだろうか。
自分自身は相変わらず、調べて、話を聞いて、考えて、語り合って、また考えるということを繰り返している。それでも、震災後からの自分の考え方はほとんど変わっていないと思う(これだけ大きなことが起きたのだから日本が良い方向に転じる可能性があると期待したことは、ものの見事に裏切られたが)。一番感じるのは、人間(というより自分)の小ささ、力のなさである。いくら時間をかけても分からないことは分からないままだし、自分にできることはとても限られている。
今回の特集を読んでも、自分の考えがすぐに変わる、新しい知恵が浮かぶということはなかった。それでも新しいことに気がつくヒントめいたものはいくつもあったと思う。これからも考え続け、自分にできることをコツコツ行うしかないのだが、そうした行為の中で、もしかしたら今回読んだものが生きてくることもあるかもしれない。
特集に続いて、大石始さんの「まつりの島(1)」、石田昌隆さんの「音のある遠景(1)」、それに「編集後記」を読んでみた。旅の話、音楽の現場の話が好きなので、お二人の連載は今後も読んでみたい。最近の季刊誌は『思想地図』も『音盤時代』も1冊目でストップ(今年は小説を優先しているので時間が取れず。『RATIO』に至っては1ページも読めなかった)。けれど、大和田俊之氏の連載も始まるらしく、『アルテス』は次号以降にも期待してみたい。
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