読書メモ:マーク・ボイル『ぼくはお金を使わずに生きることにした』

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 マーク・ボイル『ぼくはお金を使わずに生きることにした』読了。

 イギリスのブリストルに住む若者(アイルランド出身)が1年間、全く金を使わない生活を試みた体験記。これはストイックな挑戦というより、世の中のあり方について思索するための実験といったところ。隠遁といった類のものではなく、著者が重視しているのは、シェアリングや無償の施しの連鎖、コミュニティー内での結びつきといったことである。結局は資本主義社会(金を持っている人々)に寄生しているという見方もできうるが、金以外の対価を返している、あるいは「金なし」生活者が増えた方が環境のためにも良い、というのが著者の考え方のようだ。そうしたあたりが「理想主義者で現実主義者である」と自ら語るところを表していている。ガチガチの理想論を振りかざすわけではなく、適度なユーモアもあるため、読みやすく、いろいろ考えさせられる本だった。

 実際彼のような生活が出来たら、楽しいだろうし、生きている充実感もあると思う。だが、自分にはとても無理。著者の指摘に頷くところが多かっただけに、読んでいてジレンマも抱くことになった。例えば、世間の人たちよりも多くの本やCDを買っているだろう身としては、これを全て諦めることは考えにくい(買うCDの数はどんどん減らしているが…。やっぱり図書館を活用すべきかと一瞬考えたりも)。粗食の楽しみは日々実感しているが、時には外食してため息の出るような味も堪能したい。この本で書かれているような「金なし」での生活やイベントは、とりわけ日本では困難なことだろう。廃棄食料を集めてのパーティー(3500人が参加!)などは、規制でがんじがらめのこの国では想像しにくい。環境問題に対する意識はヨーロッパの方がずっと先に行っている様子が感じられた。けれども、誰もが自分にできることを少しずつでも考えていくことが大切なのだろう。


・関連サイト http://www.justfortheloveofit.org/





by desertjazz | 2011-12-12 19:00 | 本 - Readings
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