週末の新刊チェック(オルハン・パムク)

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 このところ週末に書店で新刊をチェックすることが恒例化し、楽しみにもなっている。先週は金曜日に近所のジュンク堂で5冊購入。

 トルコのノーベル文学賞作家、オルハン・パムクの『わたしの名は赤』(早川書房)は、2004年に藤原書店から出た『わたしの名は紅』と同じ原作の新訳版/文庫化。ところどころ拾い読みしたのだが、以前の和久井訳(藤原)と較べると今度の宮下訳はずっと読みやすい。もしかすると和久井訳は厳密な翻訳なのかも知れないが言葉としてあまりに不自然に思われた(かつて書いたことなので詳しいことは繰り返さないが)。そうした指摘が多かったからこそ早川が新訳版を出したのだろうし、「一気読み確実の新訳版」という帯のコピーにもその自信が現れている。

(「訳者あとがき」も読んでみたら、「紅」から「赤」に変更した理由が書かれていた。訳語としては「赤」の方が適切なのだそう。)

 パムクの小説の中では『雪』と『わたしの名は赤』が最高傑作と言われるが、藤原書店版で読んだ両者とも読み通すことに疲れてしまい、宮下訳に変わった『白い城』の方が楽しめた。『わたしの名は赤』は登場人物が順に語り継ぐと(しかも冒頭から死者が語り始める)いう一風変わった構成の作品で、歴史小説でも推理小説でもある。前回読んだときには殺人犯が誰かの判断は読者に預けられていたように読解したが、これにも疑問が残ったので、宮下訳で『わたしの名は赤』を読み直すと、どう印象が変わるかを楽しみにしている。





by desertjazz | 2012-02-07 00:00 | 本 - Readings

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