2012年 07月 22日
Sam Karpienia "Forabandit"
6月にフランスでリリースされた新譜 "Forabandit" を最近よく聴いている。フランス・マルセイユのサム・カルピエニア Sam Karpienia、トルコのウラシュ・ヨズデミール Ulas Ozdemir、イランのビージャン・シェミラニ Bijan Chemirani の3人によるアルバムで、對馬さんのこの記事によると「フォラバンディ」とは「追放された悪党」を意味する新造語だとのこと。
このアルバムを知ったのも、やはりここを読んでのこと。私がほとんど唯一読んでいるブログである「カストール爺の生活と意見」は、オクシタニア/マルセイユを中心にフランス音楽に興味を持っている自分にとって大切な情報源だ(と言いながら、数週間おき思い出す度に拝読している程度なのだが)。アルバム内容についても詳述されているので、ライナーノーツ的に利用させていただいた。
オクシタニアとトルコ/アナトリアの古詩にメロディーをつけ、サムのマンドーラと、トルコとイランの伝統楽器で伴奏して歌っている。このようなスタイルは、マルセイユの詩人 Victor Gelu の詩を歌った作品集 "Poete du peuple marseillais Chansons provencales Victor Gelu" を思い出させる(Dupain、D'aqui Dub、Jan-Mari Carlotti、Massilia Sound System、Lo Cor de la Plana、Lei Coralas dau Lamparo、Chin Na Na Poun が参加。マルセイユと北イタリアの蒼々たるメンツばかり)。
ちなみにビージャン・シェミラニはオネイラ Oneira のメンバーだとのこと。オネイラにはデュパンの元メンバーも加わっているので、彼とサムとの結びつきになるほどと思った次第。
この "Forabandit" を聴いて魅力を感じるのは、何と言ってもサムの歌とマンドーラの音。サムの歌声はデュパンでもソロでも、その力強さと独特な声色が印象的なのだが、今作も情念の籠った歌い口が溜まらなくいい。「アルジェリアのシャアビを象徴する楽器マンドーラ」も、シャアビなどで聴くときよりもずっと情感が強い。
これは地味な音楽だし、決して万人向けな作品ではない。しかし自分にとっては今年のベストアルバムのひとつになることは間違いない。
(このCDは日本に入っていないようだったので、Amazon.uk にオーダーした。フランスから取り寄せるよりも安くて£8.98、1200円弱。Amazon.uk は本当に安い。米盤もフランス盤もほとんどここから買っている。…と思ったら、7/29に国内盤も出るらしい。邦題:『吟遊詩人の出会いと対話』)
♪
サム・カルピエニアであとひとつ、繰り返し聴いて病み付きになっているのは「ソロ・ライブ」音源。彼の myspace にアップされている 'Poble de Montanha'、'Camin de Morgiu'、'Cada Vouta' がとにかくいい。こうした録音は是非ともCD化して欲しい。
幸運にもサムはデュパンで1回、自身のトリオで2回、ライブを観ることができたが、最近アルジェリアなど各地で行っているソロ・ライブも観てみたい。そう思って彼のライブ・スケジュールをチェックしてみたら、ガシャ・エンペガ Gacha Empega(NHK『Amazing Voice』出演以来、日本でも注目度が上がっている Lo Cor de la Plana 率いるマニュ・テロン Manu Theron とのユニット)のライブも発表されていた(10/6にマルセイユで開かれる option Festival le POK、さすがにこれには行けないな)。サムにしても Lo Cor de la Plana の新作をリリースしたマニュにしても、相変らず様々なセッションをかけまわって忙しそうだ。
♪
先月の転居の際、荷造り作業中はもっぱら MacBook でトコ・ブラーズ Toko Blaze の近作 "L'homme qu'on appelle..." と "Urban Griot" を聴いていた。やはり今でもマルセイユの音楽が真っ先に気になる。そのトコが新作 "Bleu de Shanghai" をリリースするらしい … ?? 現在確認作業中。
♪
♪
♪