2012年 09月 29日
Hieronymus Bosch : "The Garden of Earthly Delights" - Remembering 'Madrid Museum Tour'
今年4月のマドリッド美術館巡りでは、ディエゴ・ベラスケス『ラス・メニーナス(官女たち)』、フランシスコ・デ・ゴヤ『裸のマハ』(なぜか『着衣のマハ』は展示されていなかった)、それにティントレットやエル・グレコの諸作など、お目当ての作品を数多く鑑賞することができた。中でも、パブロ・ピカソ『ゲルニカ』、ゴヤ『1808年5月3日』、ボッシュ『快楽の園』の3点が強烈に印象に残っている。
これらのうち『快楽の園』という作品は知らないでいた(あるいは記憶から欠落していた)だけに、目にした時の衝撃はとりわけ忘れがたい。たいがいの音楽は知っているようでいて、実は聴いていないものが沢山ある。それは美術についても同様で、数々の傑作がまだ知らぬまま残っているのだろう。その分だけ、美術館巡りも海外の音楽フェスも、こういった出会いのあるから楽しいとも言える。
そんなふうに4月の旅を思い越して旅日記の後半を書いているころ、その『快楽の園』に焦点を当てたボッシュの研究書が出版された。神原正明の『「快楽の園」ボスが描いた天国と地獄』という一冊。こんなシンクロニシティーに嬉しくなり、早速購入して先日一気に読み終えた。
この本を買った理由のひとつは『快楽の園』の部分拡大画像が数多く収められていること。先に「この絵画は実物大で鑑賞する以外観る方法はないだろう(ネットで検索してみても、全てダメだった)」と書いたけれど、これなら観るに十分耐えうる。いや、丹念に見つめると観た記憶がない細部ばかり。著書によると人間だけで500人描かれているそうで、プラド美術館で20〜30分眺めただけではとても鑑賞し尽くせるものではないということなのだろう。この本の図録で『快楽の園』の微細さの凄さを改めて思い知った。ちょっと伊藤若冲を想起させるくらいに。
ボッシュのファンタジー的世界は、このようなコンパクトな本を眺めているだけでも全然飽きない。文字通り時間を忘れて見入ってしまう。調べてみると、同じ神原正明による『ヒエロニムス・ボスの『快楽の園』を読む』だとか、大判の画集なども出ていて、思わず欲しくなってしまう。その前に、来月もう一枚原画を拝められそうなので、まずはそのことを心待ちにしよう。
#
#
#