2012年 11月 16日
<MM5> Survey in Morocco ( Mazagan "Tajine Electrik" )

普段買う CD の数はかなり減ってしまったけれど、今回のモロッコ旅行は例外。訪ねる国や地域によっては日本まで情報が十分に届いていなくて、実際現地に入って探してみると面白い発見や出会いが相次ぐことが度々ある。なので海外に滞在する度になるべく自分の足で歩いて、日本に紹介されていない音楽を探してみることにしている。
2年前モロッコに初めて行ってみた時にはフナイールなどと巡り会った。モロッコといえばシャービやグナワがよく知られていて、この国の音楽全体も日本に紹介されているような気がしていた。けれどフナイールなんかを聴くと、まだまだ知られていない音楽がありそうな予感もする。そう感じて、もう一度モロッコ音楽を現地で探査してみようと思ったのだった。
とは言え全く伝手もない短期滞在では CD 店や古道具屋を巡って探すことくらいしかできない。それでもフェズとマラケシュではまずまずの成果があったのではないだろうか。
パリやマルセイユでレッガーダとスタイフィーを見つけたときなどもそうなのだけれど、私が CD を選ぶ基準は次の4つ。(1)ジャケット(2)店員のお薦め(3)試聴(4)カン。
まず並ぶジャケットを片っ端から見ていって、デザインの雰囲気や、タイトルとアーティスト名から内容やサウンドを想像してみる。その上で「当たり」と感じたものや気になるディスクをザッとピックアップしていく。時間や金のかかったものやプロダクションの新鮮なものなら、スリーブにもそれなりに丁寧に作られているので、そのようなものは選びやすい。これが第一段階。
次は店の人に質問攻勢。「今流行っているのは?」「一番人気は?」「君がいいと思うのは?」と尋ねてみる。例えば今回のマラケシュではこんな具合だった。
「どれが一番のお薦めだい?」
「ティナリウェンがいいよ」
「それなら全部持ってるよ」
「ハレドの新作は?」
「日本にもあるよ。モロッコの音楽が欲しいんだ」
「じゃあ、センハジは?」
「そんなのどこでも買えるよ」
「ビラルは?」
「いらない!マラケシュの音楽とかヒップホップやラップとかないの?」
「フナイールは?」
「とっくに持ってるって!」
そんな無駄なやり取りの末、徐々に宝に近づいていく。
ジャケでピックアップしたものも店のお薦めも全て試聴可能。時間の許す限り次々聴かせてもらうのだけれど、CD 買うのが目的で旅行しているわけではないのであまり時間はかけたくない。その一方でなるべくたくさん聴いてもみたい。結果、5秒か10秒聴いただけで結論を下していく。薦められたものが意外と良かったり、ハズレが続いたりと一喜一憂。
あまりハズレが続くと試聴は中断。というのは新品のシールドを破いて聴かせてくれるので、全く買わないというのも気の毒だからだ。大体は義理で物足りなそうな盤も加えて買ってしまうのだが、それも無駄。他の客が試聴待ちしてることも多い。そんな時には休んで、プレイされるディスクに耳そばだててみる。当たりの多かった店は毎日通ってそんな立ち聴きを繰り返すとさらに発見があって面白い。
海外旅行中はこんな風にして CD を選んでいくのだけれど、最後はやっぱりカンかな。数百枚、時には千枚以上のアイテムを一気にチェックしていくので、ジャケとカンだけに頼って買ってしまうことが圧倒的に多い。けれども、実はフナイールにしてホースゥィン・スラウィにしても全くのジャケ買いだったので、この方法でも案外打率はいいと思う。このあたりは、どんな音楽を聴いてきたかという経験値がものを言うのだろう。
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今回マラケシュで真っ先にジャケ買いしたのはマザガン MAZAGAN の "Tajine Electrik"。初めて名前を聞くグループだったけれど、タイトルと裏ジャケの写真のバカっぽさだけでもうOK! 間違いなく面白いことを確信した。

(正確に書くとレジに進む前に試聴してみたら、期待通りの斬新さ。渋谷・某店用にあるだけ買い占めました。)
このマザガン、モロッコらしい土臭さとタイトル通りのエレクトリックなサウンドとがミックスされた痛快なモロカン・ライで、ずばり当たり! 聞くところによるとすでに幾つかのコンピ盤で紹介されており、ハレドの新作にも1曲ゲスト参加しているとのこと。自分が知らないだけで、マグレブと欧州ではとうに話題のグループだったようだ。
今はどのようなジャンルでもガイド本が大流行りで、カタログ文化全盛の時代。音楽についてもそうで、聴き始めたばかりの初心者にとっては有益なこれらの情報も、長年音楽を聴き続けて来た者にとっては物足りないことだろう。ネット(とりわけ YouTube ?)を活用してカタログから抜け落ちた音楽を熱心に探求されている人も少なくないようだ。
自分の場合はネット探索など億劫で、カタログに載っていないようなサウンドに自ら歩いて見つけることの方に大きな喜びを感じている。そんな地味な方法でも、フナイールやホースゥィン・スラウィやマザガンのような面白い音楽に出会ってしまうので、海外では頑張ってドカ買いしてしまうんだな。
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