2012年 11月 17日
<MM7> Oum & Precious Makina
従来のモロッコ音楽のイメージから離れているといった意味で一番モダンなサウンドを生み出しているのは、女声シンガー/ミュージシャンのオウム Oum かと思う。大半の曲を英語で歌っている分、普通のコンテポラリーなソウルに聞こえるトラックもある。しかし、砂漠で生まれたことも意味する自身の名前、そして 'Soul of Morocco' を自称するだけあって、自国の伝統音楽とポップ、ヒップホップ、R&Bとのミックスを意識したサウンド作りを目指している。
2009年のファースト "Lik'Oum" に続くセカンド "Sweerty" がちょうど完成した直後らしく、マラケシュでは Virgin Megastore にだけ僅少数入荷していた(ブートレッグはまだ皆無)。スタッフ(古い!)をバックにエリカ・バドゥが歌うようなテイストのトラックもあるけれど、そこにどこのものか分からない言語の歌(モロッコの地方語?)が重なるパッセージなどには独特な心地よさがある。カメルーンのマヌ・ディバンゴが1曲ゲスト参加。
・ http://www.oum.ma/
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コンテンポラリーなアーバン・ミュージックとしては Precious Makina の "Bel3akss"(2009年)も気に入った。女性2人+男性5人の7人組で、ゲンブリ、ウード、ダラブッカも交えたロックサウンドを聞かせる。センターの女性ボーカルは太い低音を響かせ、しばらくは男性だと思い違いさせられた。オープニングの 'Salam' も強烈にカッコいいけれど、まずは 'Daba Ya3fou' をご一聴を。
CD1枚の通常盤もあったが、スタジオライブDVDを合わせた2枚組を購入。何と言ってもモロッコ盤は安いので、こうしたときどちらを買うか迷うことがない。
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今回の旅行は日程を組むのに胃がちぎれそうなくらい苦心したのだけれど、どうにか成功に結びついた勝因はカサブランカをパスできたこと。モロッコ旅行はカサブランカでのイン/アウトが通常パターン。しかしカサブランカでは目的がなく(前回のモロッコ旅行でもカサではな何も感じなかった)、カサ・トランジットにすると2日くらい旅程を無駄にしてしまう。あれこれ調べ続けて、自分の日程に合うマルセイユーフェズ便とマラケシューパリ便を見つけ出せたのは本当に幸運だった。
その一方で、Oum や Precious Makina のような先鋭的なサウンドを聴くと、カサブランカの音楽シーンも面白そうに感じる。モロッコというとどうしてもまずシャービ、アラブアンダルース音楽、グナワなどを連想してしまうが、フナイールなどのような現代ポップも存在する。モロッコはある意味先進国で、カサブランカやマラケシュはヨーロッパと結びついた都会なんだよな。
実際、Oum のセカンドはフランスのグルノーブルで録音され(一部はパリなどでも)、ミックスはリヨンで行われている。パッケージングのクオリティーも世界配給されておかしくないレベルだ。カサブランカのファッション・シーンも活発化している様子で、Oum のファッションはそうしたものと共振し合っているのではないだろうか。もちろんモロッコのキュイジーヌや内装デザインも有名。音楽を中心にカサブランカの現代シーンに対する興味もちょっと膨らんできた。
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(追記)
Oum の "Sweerty" はブックレットが16ページのものも出ている(通常版は4ページ)。どんな中味なのだろう。( > http://www.arabicmusic.ma/ )
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