2012年 11月 25日
Urban Indio - Vinicius Cantuaria
昨晩に続く話。
Goran Bregovic の華やかなステージでスタートした今回の(自称) Grand Tour、話は一気に飛んで帰国前夜、パリで最後に観たのはニューヨーク在住のブラジリアン、ヴィニシウス・カントゥアリア Vinicius Cantuaria だった。ヴィニシウスは大好きなミュージシャンのひとり。そろそろ欧州やマグレブの音から離れて、彼のライブを聴きながら日本に戻る心の準備をするのも悪くない。
訪れたのはパリ1区にある店(名前は何だったかな? 後で調べます)。客が50人も入ったら一杯になってしまいそうな小さなハコでの3連夜のファーストセットを観てきた。ヴィニシウスのエレキギターに、ピアノ、ベース、ドラムの加わったクァルテット編成。ヴィニシウスは自身の内なる音を探るかのように弦を柔らかく撫でる。ギリギリ最小限の音のみで何かを伝えよう、表現しようとするかのよう。対するトリオの演奏も悪くはないのだが、ヴィニシウスと比較すると普通に聞こえてしまう。ヴィニシウスのギターの音量も余りに低すぎて、いろいろ不満も残るステージだった(店の客入れが拙かったりと問題だらけ)。
ヴィニシウスの音楽は、都会生活者の寂寥感のようなものが漂っていて、秀でた現代的アーバン・サンバでもあり、思索的に耳を傾けられ、頭を空っぽに開放しても聴け、ぐっと体温を落とした Caetano Veloso といったようにも表現したくなる。個人的にはそのようなところが気に入っている。アル中だかヤク中だか分からないような(失礼!)風貌で現れたヴィニシウスの、パリでの歌とギターからも同じような印象を受けた。
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店内ではリリースされたばかりの新作 "Indio de Apartamento" が売られていたので即購入。帰国後も繰り返し聴いている。坂本龍一、Norah Jones、Bill Frisell など多彩なミュージシャンとのデュオ集といった色彩。坂本と共演した1曲が6分半あるのを除くと、他は1〜4分台で、わずか1分で終わる曲もある。10曲全部合わせても30分に満たないので、さながら小篇集とも言えるか。ヴィニシウスが描く美しいデッサンに触れるかのようなアルバムだ(Jesse Harris との 'This Time' がまるで James Taylor のような健全さ?で異質なのだけれど)。
セットの合間にヴィニシウスと立ち話しながらサインをいただいた。「今年日本で公演されましたよね。また日本に来てください」と声をかけると「一度ブラジルに戻った後、来年6月にまた日本に行くよ」と答えてくれた。今年 Bill Frisell とやった日本公演は観られなかった(大阪には来なかったんだよなぁ)ので、この話が本当ならばとても楽しみ。
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現役のブラジル人ミュージシャンの中で一番好きなのは、女性では Adriana Calcanhotto、男性では Seu Jorge。そしてそれに次ぐ2番目は Vinicius Cantuaria かな。Adriana は Partimpim 名義の3作目 "Ties" を先日届けてくれたし、Seu Jorge も間もなく新作 "Musicas Para Churrasco Ao Vivo Vol.1"(2CD & 2DVD)をリリース予定。どうやら今年の冬は大好きなブラジル音楽を楽しめそうだ。
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