2013年 03月 18日
自由芸術展『レイモン・ルーセルの実験室』 (2)
自由芸術展『レイモン・ルーセルの実験室』に関する追記。
昨日催されたトークセッションを配信動画で視聴。高橋士郎の話がとにかく面白い。
・ USTREAM:高橋士郎「自由芸術展」 〜レイモン・ルーセルの実験室〜 トークセッション「レイモン・ルーセルをめぐって
以下、印象に残ったことば(走り書きしたものなので、厳密な書き起こしではない。10分過ぎまでマイクがオフで、聞き取りにくい場面もあり)。
・「ルーセルは、知っているが最後まで読んだ人が少ない一番の小説」(港千尋)
・「現実を書いたレリスの『幻のアフリカ』と想像によるルーセルの『アフリカの印象』とでは、まるで真逆。反対にレリスが「アフリカの印象」を書いており、ルーセルが「幻のアフリカ」について書いている」(岡谷公二)
・「形状記憶合金、ピエゾ素子、(血を吐いて文字を書くニワトリの)インクジェットなど、現代の最先端技術を明治時代の小説に書かれている」(高橋士郎)
・「NASA はジュール・ベルヌの真似をしている」(高橋)
・「金融こそ最高の芸術」(高橋)・・・ここから話が脱線するも、大資産家に生まれたルーセルの芸術論に戻っていく。
・「大脳皮質なんてものが生まれたから、人は悩んだり、余計なことを考えたりする。大脳皮質を消費し疲れさせるために、宗教や芸術、そしてルーセルが必要になった」(高橋)
・「あの小説を書くのはものすごいエネルギー」(高橋)「ルーセルは生きていて楽しいことは一度もなかったと語っている。現実の中では暮らせない彼のエネルギーが創作へ向かわせた」(岡谷)
・「地球を壊しつつある人類の未来への選択は3つ。科学技術をつきつめるか、ターザン的生活に戻るか、オタク化するか。これらのバランスが重要。芸術はオタク。だから、そこにこれからの芸術の役割がある」(高橋)
・「(空気膜造型について)コンピューターグラフィックは風船なんです」(高橋)
・「人間が育ったのは '空気と重力' のおかげ。ルーセルの小説も '空気と重力' のリアリティー」(高橋)
・「マッキントッシュの中には凄いものが入っている。マッキントッシュの新製品が出ると、いつバラせるかと思うとワクワクする。マッキントッシュの放熱板はいい音がする」(高橋)
一番伝わってきたのは、現実を直視し、リアリティーを追求しながら創作活動に励んでいる高橋士郎の姿勢だった(原子力発電所に関する最後の方の発言も全く同感)。
先日ここで「読んで役に立つことは皆無だし、読み終えて残るものも一切ない。」と書いたが、ルーセルの小説を単なる小説ではなく、「アート」として読むと、それは全く変わってくるとも思った。そこが彼の小説に惹かれる大きな理由なのだろう。
(今朝も4時半に起床して仕事だったので、昨晩はこのトークセッションもヒュー・マセケラのライブも断念。なので動画配信されたことに感謝。)
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追記:
より詳しい部分書き起こしがあった。→ http://twitter.com/azmtwt
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このトークセッション、ルーセルと親交のあったミシェル・レリスと彼の著作『幻のアフリカ』の紹介から話が始まった。ボラーニョの『2666』並に厚く重い本だけれど、改めてこれも再読したくなった。「今年読む本」のリストに入れようか?(写真は「完全版」と「文庫版」)
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