2013年 05月 08日
Oliver Mtukudzi | Bio & Discs (1) : "Tsoka Itsimba"
最近特に気に入っているのは、ジンバブウェの巨人オリヴァー・ムトゥクジ Oliver Mtukudzi の2007年のアルバム "Tsoka Itsimba"。しばらく前に入手したばかりなのだが、本当に素晴らしくて、病み付きになったように聴いている。
自身が Tuku Music と呼んでいる彼の音楽は、ジンバブウェや南アのスタイルを融合させた弾むビートと明るいメロディーを大きな特徴としている。そのサウンドに乗るオリヴァーのハスキーな歌声は、軽やかでパワフルでとってもソウルフル。スローな曲では滋味深い歌い口が切々と心に染みてくるところも魅力だ。きっと誠実に生きている人なんだろうな、彼の歌声を聞く度にそんなことも感じる。
アルバムのオープニングナンバー 'Ungade' We?' は初期の West Nkosi プロデュース作を思い出させるようなタウンシップ・ジャイブ風。2曲目 'Chikara' は典型的な Tuku Music なのだが、ンビーラ(親指ピアノ)も加わってジンバブウェ/ショナ風味が高まっている。そして3曲目 'Kuropodza'、これが素晴らしい。初めはムードを優先したフュージョンっぽく聞こえるかもしれないが、モード的に動く穏やかなメロディーラインも、哀感たっぷりのオリヴァーの歌声も、女性コーラスが織りなすハーモニーも、ギターやキーボードのアレンジも、どれもがとても美しい。
・ YouTube | Oliver Mtukudzi- Kuropodza
その後はまたオリヴァーらしい Tuku Music のナンバーが続く。そしてアルバムのハイライトは 'Vachakunonokera'。'Kuropodza' にも増して切なく美しい。このトラックも、コーラス、ギターやサックスの演奏が絶品。これら2曲は、南アのジャズ的要素と脱アフリカ的要素とが絶妙にブレンドされた、アフリカン・ポップというジャンルに収まり切らない名バラッドだと思う。
・ YouTube | Oliver Mtukudzi-Vachakunonokera
'Vachakunonokera' の歌詞は、息子に対して怠けて働かないことをいさめる内容。親の遺産を当てにしていると、時として父親より先に死んでしまうという喩えを交えながら歌っている。このアルバムをリリースした後の2010年に、バンドメンバーでもある実の息子を交通事故で失ったのは何とも残酷な巡り合わせと言うしかない。
それにしても、なんてクールかつ穏やかなサウンドなのだろう。オリヴァーのアルバムは最近に至るまでどれも良いけれど、この作品も彼の代表作に挙げてもいいのではないだろうか。
(余談:この CD は日本では見かけたことがないけれど、簡単に買える。そのことはツイートした通りです。後日、追記予定。)
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最愛の息子を亡くしたショックから、オリヴァーは音楽から離れ気味になったとも伝えられていた。そんな彼がいよいよ活動を本格的に再開し、今年の夏 Sukiyaki Meets The World への出演も発表になった。待望の初来日である。
・ SUKIYAKI MEETS THE WORLD 2013
これは絶好の機会だと思って、彼の作品をまとめて聴き直し始めた。今回じっくり聴いてみて、オリヴァー・ムトゥクジこそアフリカで最高にソウルフルなシンガーだと再確認した。CD や DVD もかなり集められたので、そこで8月の来日に合わせて Oliver Mtukudzi の特集記事を作成しようと考えている。(60枚あるという全アルバムのレビューは無理としても、なるべく時間軸に沿ってバイオと主要な作品を紹介してみたい。… ってホントに出来るのか?)
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これを書き終えた後に、ドキュメンタリー DVD "Shanda" をたまたま観直したら、夕景の中、オリヴァーが曠野に立って 'Kuropodza' を弾き語る映像がラストシーンだった。このスピリチュアルな絶唱が感動的なまでに素晴らしい。出来ればフルヴァージョンで聴きたいほど。そして、同じ曲のスタジオヴァージョンが流れる中、エンドロールへと進む。やはり 'Kuropodza' は彼の代表曲ということか。
いや待てよ、"Shanda" が制作されたのは 2002年。これでは時系列的に矛盾している。"Tsoka Itsimba" はコンピレーションなのか? 今のところ謎だ。
(つづく)
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