プルースト中 / VAT / Rokia Traoré

 プルーストの『失われた時を求めて』を読み終えた後にもたらされたのは、大きな達成感とたくさんの「抽き出し」だった。そして読んでいる最中、常に頭に浮かんでいたのはヴェネチアの景色だった。

 『失われた時を求めて』の語り手はヴェネチアに憧れ続け、小説の終盤近くでようやく訪ねる(驚くほどに短い描写なのだが)。この小説においてヴェネチアが重要な舞台のひとつになっているのだが、そうとも知らずに昨年12月にプルーストを読み始めたのだった。

 自分にとってもヴェネチアはいつか訪れたいと長年思い続けていた土地。イタリアには出張で二度滞在し、ローマ、ナポリ、トリノ、アッシジなどはある程度知っている。けれどヴェネチアは近郊のレオナルド・ダビンチ空港に深夜に降り立ったことがあるだけ。イタリアはヨーロッパの中でも特に好きな国のひとつなので、フィレンツェ、シチリアとともにヴェネチアにはいつか必ず行こうと決めていたのだった。

 その夢が昨年遂に果たせた。



 マルセイユで毎年10月後半の週末、2週続けて開催される Fiesta des Suds、昨年は全日程観るように旅のプランを立てた。だがマルセイユに10日もいたところですることはない。なので、2つの週末の間は他所で過ごすことにした(後から Moussu T のレコーディングを見においでと誘われたり、Toko Blaze のレコーディングがあることを知っりもしたのだが)。

 そこで思いついたのはヴェネチアかフィレンツェに行くこと。調べて見るとヴェネチアの方がずっと魅力的なようで、Air France のチケットを早めに購入すれば ¥17610で往復できることも分かった。

 そのようなことで、昨年 10/21〜10/25 の4泊5日の日程でヴァネチア滞在を実現。

 ヴェネチアに絶対行こうという気持ちを後押ししたのは、E.H.ゴンブリッチの『美術の物語』を読んだから。この本に影響を受けて、即座にマドリッドに飛んだことは昨年4月に書いた通り。全く同じ理由で、ヴェネチアの美術や建築も見尽くしたいと思ったのだった。

 その間の日記は Twitter に書いていた。読み返してみると、サン・マルコ広場、グッゲンハイム美術館、プンタ・デッラ・トガーナ、S.M.G.d.フラーリ教会、サン・ロッコ教会、サン・ロッコ大信者会、カ・ドーロ、ドゥカーレ、サン・マルコ寺院、サン・ザッカリア寺院、アカデミア美術館、フランケッティ美術館、サンティッシマ・ジョヴァンニ・エ・パオロ教会、スクオーラ・ダルマータ・サン・ジョルジョ・デッリ・スキアヴォーニ、旧造船所、等々を訪ね歩いている。

 たったの中3日の滞在だったのにも関わらず(風邪気味で半日ホテルで静養もした)、事前に調べて興味を持ったところはほぼ行き尽くし、ティントレットやティッツィアーノの諸作、ベッリーニ『玉座と聖母と諸聖人』などヴェネチアの名作はかなり網羅できたのだった。

(ヴェネチア滞在については旅行記を書きたかったのだけれど、いまだにできていない。せめて写真くらい整理しておこうか?)



 プルーストを読む直前にヴェネチアを実際旅してきたのだから、小説の中でヴェネチアを描写する文章が現れる度に具体的なイメージが頭の中に浮かんできた。語り手が思い描いた教会や絵画、実際に歩いた広場や建物、それらについて語られるごとに、自分の頭の中ではっきりと像を結ぶ。旅した体験は偶然にも読書を大いに助けることになった。こんな巡り会わせってあるんだなぁ。





 話は突然変わって、、、ロキア・トラオレが共著を出していることに気がつき、取り寄せて拾い読みしてみた。

 ・ Toni Morrison "Desdemona" Lyric by Rokia Traoré
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 アメリカ在住の黒人女性作家であり1993年にノーベル文学賞も受賞したトニ・モリスンが執筆し、ピーター・セラーズ Peter Sellars が舞台演出した『デズデモーナ』の脚本で、ロキアが詩を担当している。『デズデモーナ』すなわち、シェークスピアの『オセロ』、ってことはこれも舞台はヴェネチア!? こんなシンクロニシティーは楽しい。

 2011年にロンドンなどで公演されたこの舞台の映像をネットで探索して見ると、ロキアはコラ奏者などと一緒にパフォーマンスをしている。このステージは観てみたかった。せめてビデオでフルに観られないものだろうか(2時間ほど行われたシンポジウム等は簡単に見られるのだが…)。


 DESDEMONA: Toni Morrison, Peter Sellars, Rokia Traoré.






by desertjazz | 2013-05-26 00:00 | 本 - Readings

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