読書メモ:ダニー・ラフェリエール、アフリカ本

 「プルースト後遺症」から徐々に脱しつつあるようだ。ようやく読書を再開し、割合軽めの本を何冊か読み終えた。以下、それらに関する簡単な感想。


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・ダニー・ラフェリエール『ニグロと疲れないでセックスする方法』

 カナダのモントリオールに暮らすハイチ人作家のデビュー作(1985年)。まあタイトル通りの内容か? ハードバップ・ジャズやスウィング・ジャズが全編にわたって流れる下での、ニグロのモテ男と(インテリ)白人女性との交歓。小説に登場する人物が揃って個性的。詩のようなリズム良い文体が気持ちいい。

 今年1月頃に『2666』と『失われた時を求めて』を読んでいる最中、これも読み始めたものの、最初の1ページだけで全く先に進まなくなった。けれども今度はサクサク前進。あの頃はきっと活字の需要限界を超えていたのだろう。


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 ダニー・ラフェリエールの邦訳はこれが3冊目。やっと訳書が出た今度の処女作が一番面白く読めたかな(もちろん先の2冊の内容が重かったせいもあるのだが)。


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・勝俣 誠『新・現代アフリカ入門 〜人々が変える大陸』

 昔読んだ『入門』も良かったので、この新版も即購入。最近までのアフリカの政治状況を概観するには適当な入門書。ただしアフリカ全体を薄い新書で説明するには当然限界がある(本書でも地域をかなり狭めて語っている)。今中国がアフリカでやっていることは、自国の都合最優先といった点ではかつての欧米や日本がやってきたことの焼き直しに過ぎないと理解した。結語が期待(理想論)で終わっている点は、諸問題の解決困難さを示しているか。

・絲山秋子『北緯14度 〜セネガルでの2ヶ月〜』

 ドゥドゥ・ンジャエ・ローズに憧れてセネガルに旅立った話ということで期待したのだが、ここ10年くらいの間に読んだ中で中味が一番薄い本だった。まるで赤の他人の日記を読んでいるかのよう。旅費を出した出版社が、予算回収だけを目的にしたような本。残念。

・堀内 孝『マダガスカルへ写真を撮りに行く』

 著者はマダガスカルに出会って恋焦がれ、通い続けて写真を発表するまでになった。そうした憧れることの強さが伝わってくる一冊。マダガスカルについてはそれなりに知っているつもりだったが、広大な島ゆえに自分の知らない魅力に満ちていることを教えられ、ますます行きたくなってしまった。(インドネシアや沖縄にもある)複葬文化には昔から興味があって調べているが、その辺りについても書かれていた。何より著者の音楽体験が羨ましい。深澤秀夫氏所有のSP盤から著者自らストリートで録音した音楽まで、すべての音が気になる。





 たまたまアフリカに関する本が続いたが、正直なところアフリカについて読んでいてもなかなか集中できないでいる。今の日本を見つめるとこの先不安ばかりで、読書している最中にも「アフリカについて読んでいる場合だろうか」といった考えが絶えず頭をよぎる。

 最近読んだ中で最も説得力を感じたのは、内田樹が朝日新聞のオピニオンに寄稿したこの文章。日頃考えていることと重複するところが多く、ほとんどの部分に同意する。

 ・ 朝日新聞の「オピニオン」欄に寄稿

 日本の現状を憂い、何をすべきか考えてばかりいると消耗してしまうので、アフリカについて読むことは、より大局的に物事を考える道具となると同時に、雑事を忘れられる楽しみにもなっているのかも知れない。






by desertjazz | 2013-05-28 00:01 | 本 - Readings

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