2013年 07月 29日
読書メモ:『FELA KUTI 自伝 - This Bitch of a Life』雑記
フェラ・クティのライフストーリーはやっぱり面白い。この本も一気に読み終えてしまった。
以下、取り急ぎの雑感。
・フェラ・クティ本人の証言を中心に、15人の妻たち(ダンサーや DJ など)といった関係者へのインタビューも交えた構成となっている。フェラの語り口がとにかくいい。
・1982年に第一版が出たこの本、最近もフェラへの評価が世界的にますます高まり続けていること、あるいは若手層へのその人気の広まりを考えると、今改めて出版する意味は大きい。
・そういった意味からは、同時代的に聴いていない人たちにとってこそ役立つ一冊だろう。フェラの音楽は、彼の凄まじい生涯を知ることで、面白味がぐっと増す。特に70年代のフェラの闘いは必読。それらがあってこそ傑作曲の数々が生まれたのだから。
・フェラのスピリットは今現在の反原発運動などにも少なからず受け継がれているとも思う。フェラを聴いて、(自分のできる範囲で)世の中を良くしたいという気持ちが沸き起こらない方がおかしい。
・誰にも真似のできない「凄さ」と、どうしようもなく視野の狭い「ダメさ」を抱えもつ。フェラはそんな矛盾だらけでありながらも、唯一無比な20世紀を代表するミュージシャン。その実像がひしひしと伝わってくる。そのあたりは「イントロダクション」が全てを語っている。
・本題は1981年頃で終わっているが、その後については「エピローグ 理由ある反抗」で補われている。ここを読むと、80年代初頭を分岐点にフェラの音楽生活と生き様とが急速に駈け下っていく様子が思い返される。
・ここ以降の神秘主義めいた怪しさは、Majemite Jaboro の "The Ikoyi Prison Narratives: The Spiritualism and Political Philosophy of Fela Kuti" に繋がるわけか。
・フェラの人生を知るには圧倒的に分量が少ない。Michael E. Veal "Fela: The Life and Times of an African Musical Icon" もなどもう一度読みたくなる。
・気になったのは "Fela: Why Blackman Carry Shit"(邦題『フェラ・クティ 戦うアフロ・ビートの伝説』)の著者 Mabinuori Kayode Idowu の "Fela: Phenomenon and Legacy" (2006) が参照されていたこと。これも読みたいが、残念ながら未出版とのこと。
・フェラの晩年はいよいよボロボロだったようだ。反対に晩年の演奏(正式な録音は残されていない楽曲群)を高く評価する意見もある。このあたりどう整合性が取れるのか? あるいは永遠の謎なのか?
・27人の女性と同時結婚し毎日セックスしていたのだから、さぞや子沢山だった、かと思うのだが、そうした話を聞かないことが不思議だった。センセーショナルだった同時結婚以降の子供はひとりだけだったらしい。
・オリジナルにあった写真のほとんどを割愛したことはしかたないと思う。無理に載せても不明瞭な写真ばかりになることだろう。邦訳を読みながら英語版(第一版)の写真も眺めていったのだけれど、フェラの奥方がまあ揃って美人だこと。何とも羨ましい(…というのが一番の感想かも?)
・ダカールでフェミに会ったこと、レゴスのニューシュラインでフェラの親族たちに会ったことも蘇る。けれども、やっぱりフェラに会ってみたかった、フェラのライブを直に観てみたかった。
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