SUKIYAKI 2013 - Antonio Loureiro

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 今年のスキヤキについて思い返す度に、なぜかアントニオ・ロウレイロのことばかり頭に浮かんでくる。どうにか都合をつけて東京から富山県の福野にまで行ったのは、オリヴァー・ムトゥクジとユーカンダンツのライブを観たかったからであり、もちろんそれらは堪能できた。ただ両者が概ね期待通りだったのに対して(予想を超える点もいくつかあった)、アントニオ・ロウレイロの方はいろいろ未知数だった分、かえって印象に残ったのかも知れない。

 SUKIYAKI MEETS THE WORLD の最終日に登場した彼のステージはピアノの弾き語り。いかにもミナス風でありながら独特な美しさを持ったメロディー、変幻自在なピアノプレイ、繊細さにの中に荒削りなところも混じったパッショナブルな歌。静謐さと力強さを兼ね備えた独特な世界観を展開していく。夜ごと小音量で聴いていた CD の音とはかなり違った印象を受けた。ヘリオスという響き良いホールのフロアに足を投げ出し、時には横になりながら(入りがさほどでもなかったので)、アントニオの足元で、彼の歌とピアノにのんびり耳を傾けていたのだった。

 あー、なんという贅沢な時間だったことか。

(直前の仕事の忙しさもあって、ほとんど眠れないままに福野入り。今年はスキヤキへゲストとして招いていただいたものの、ほとんど何もできず仕舞。ステージ写真も毎度「頭撮り」だけして、あとは後方で休んでいることが多かった。そんな体調だったこともあって、まったり聴けた彼の演奏へますます好印象を持ったのかも知れない。アントニオをスキヤキに呼ぶのはミスマッチじゃないかと言っていた自分が、結局一番楽しんだ?)

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 翌朝、ホテルのレストランでたまたまアントニオたちと一緒の席になり、朝食を食べながら話の輪に加わわる。「ヨシガキは日本で一番のドラマーのひとりだよ」と話かけると、アントニオは「誰?」って顔をする。この時点では、東京でどんなアーティストと共演するのかよく分かっていなかったようだ。

 ところが、SUKIYAKI TOKYO の幕が開けてみると、日本人3人のサポートを得たスペシャルユニットの紡ぎ出すサウンドが何とも素晴らしいこと。アントニオの演奏はさらに集中度を増し、実に美しい。そして、あくまでもサウンドの中心にアントニオが居ながらも、それを芳垣安洋(dr)/鈴木正人(b)/佐藤芳明(accordion)の3人がそのフレームをぐっと拡げていく。とりわけ芳垣のプレイが凄すぎる(毎度のことだが)。アントニオもそれをよく感じ取ったようで、中盤に芳垣が絶妙艶やかなスティック捌きを繰り出した瞬間、「いいね! そうだよ!」と声をかけるかのように彼を指差し、幸せそうな笑みを浮かべた一瞬が忘れられない。このユニット、もし世界ツアーをして回ったら、どこでも絶賛されるだろうな。

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 福野でのソロと東京でのクァルテット、その両方を聴けたというのはかなり貴重な体験だったんじゃないかな? 熱心なブラジル音楽ファンでも2つのステージとも観たって人はほとんどいないでしょう。喩えて言うなら、両者には水墨画と油彩画くらいの違いがあった。その2つを堪能できた幸運。

 でも、アントニオはすぐに再来日することでしょう。きっとそうなると思う。それにしても "Lu Da Terra" は名曲だなぁ。まるでミナスの風がそよいで来るようで、そんな彼のサウンドにもう一度包まれたい。


(写真は全て 2013年8月25日に SUKIYAKI MEETS THE WORLD の会場で撮影。SUKIYAKI TOKYO は Photo Pass をもらわなかったので写真はありません。東京にはオフィシャルが入るだろうから素人カメラマンは邪魔と思って Pass は申請しなかった。実際素晴らしい写真がネット上でいくつも披露されています。)





by desertjazz | 2013-10-09 02:00 | Sound - Festivals

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