2013年 10月 10日
If you want autographs ...

音楽フェスやコンサートに行くときには、油性ペンを持ち歩くようにしている。それも、黒と銀の2本。これはミュージシャンたちからサインをもらうための準備。もし CD のジャケットが明るい色ならば黒ペンで、暗ければ銀ペンでお願いする。
スキヤキ・ミーツ・ザ・ワールドでは、会場でお会いしたオリヴァー・ムトゥクジさんにサインをいただいた。セカンド LP には銀ペンで、最新作 CD には黒ペンで。
振り返ってみたら、今年サインをもらったのは彼以外は思い浮かばない。スキヤキでもたくさんのアーティストたちと言葉を交わしたのに、ムトゥクジさんの他には誰からもサインをもらわなかった(それでもサインを求める人を見つけるごとに、ペンをお貸しできたので、持ち歩いていたことは結果として都合が良かった)。
レコードなどの物へのこだわりが年々薄れて行くのに伴って、どうもサインをもらうとう行為が億劫になってしまっているようである。それと同時に、良い音楽を生で聴いて、ミュージシャンたちと一緒に飲んで、彼らと雑談を楽しんでいると、もうそれだけで十分満足してしまう。サインをもらうというファン心理からほんの数ミリ先に進んだことで、もうサインを欲しいと思わなくなっているようにも思う。
逆の言い方をすると、オリヴァー・ムトゥクジさんは、これからもずっと天上人/憧れの存在であり続けるように感じたからこそ、サインをいただく気持ちになったのだと思う。
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ムトゥクジさんは質問を投げかけられない限りは、自ら口を開くことのない寡黙な人。初めて会った彼に対してそんな印象を受けた。
それが、スキヤキの会場で紹介する機会があるかと思って私が持って行った彼のレコードの中にあったセカンド LP "Chokwadi Chichabuda" を目にした瞬間、彼が突然話しかけてきた。「こんなレコード、どうして持っているんだい?」「このジャケットのスキャンが欲しい。私のメールアドレスはこれ(と言ってメモ書きする)。ここに送ってくれるかい?」驚いて「持っていないんですか?」と訊ねると、あるけれどすでにボロボロになってしまっているそう。ジンバブウェでも、こんなにピカピカのミント盤など既に存在しないのかも知れない。なので、彼はよっぽどこれのコピーが欲しかったんだろうな。思わず LP ジャケットをそのまま「差し上げます」と言いそうになってしまったのでした。
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