New Book : Tony Allen + M. E. Veal "Tony Allen : An Autobiography of the Master Drummer of Afrobeat"

 先日読み終えた『トニー・アレン自伝』について軽めにレビュー。




"Tony Allen : An Autobiography of the Master Drummer of Afrobeat" はアメリカ在住の音楽研究者(ナイジェリア系)マイケル・ヴィールがトニー・アレン本人の語りをまとめた本。

 トニー・アレンがドラム奏者としての活動を始めて以降、在籍したバンドや共演メンバーがほとんど網羅されている。また家族などプライベートについても詳しく語っており、トニーに関しては決定版の一冊と言える。

 彼がいかにして巧みなドラムプレイヤーに成長し、独自のプレイスタイルを生み出したかの話には釘付け(ただし、自分のドラムキットを長年持っていなかった彼が、短期間に腕を上げることができたのかについては、まだ謎が残る)。

 自分が知らなかっただけなのかも知れないが、「なるほどそうだったのか」といった証言の連続。例えば、「69年からの訪米はどれだけ続いたのか? ほとんどスケジュールがブッキングされておらず詐欺に合ったのに等しかったのに、その間どうやって食いつないできたのか?」などの答えが語られている(その答えは「10ヶ月。ライブが常にあった訳ではないので、音楽以外の仕事に就いて稼いでいた」)。

 思った以上にフェラ・クティと活動を共にした時代について語られている。70年にアメリカから帰国し78年に Africa 70 を脱退するまでのことは、これまえも多く語られてきたこともあって、個人的にはそれ以前の話に特に興味を持った。

 トニーの話を信じるならば、フェラ・クティはどこまでも金にだらしなく、人間的にも最低だった。フェラと出会ってから彼が死ぬまで、トニーも非人間的な仕打ちを受け続けた。

 それでもトニーはなかなかフェラと袂を分かとうとしなかった。それは「金より音楽を選んだ」からだと再三繰り返される。フェラを天才と認めた上で、自身の音楽面での充実を優先させた。バンドを離れた後も、フェラから共演や助力を求められる度にそれを断らなかったことが多かった。

 フェラがどうしようもない悪人であるのに対して、トニーがどこまでもユーモア持った善人であるかのように書かれている。しかし、これまで4度彼と会って話した印象もその通りだった。この本はトニー・アレンという人間を等身大に描いていると思う。

 アフロビート誕生に大きく寄与したトニー・アレンの貴重な証言集。フェラ・クティとアフロビートに関心のある方に強くお薦めしたい。日本語版の出版を改めて熱望!






by desertjazz | 2013-10-27 23:01 | 本 - Readings

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