2014年 02月 26日
一生モノの Jaques Brel
実はレコードを買うことを再び止めている。全く買っていないわけではないが、ここ半年以上は昔と比較すると遥かに少ない。CD 購入枚数が実質ゼロに近い月もある。
理由はいくつかある。まず音楽を聴くより本を読んでいる方が楽しい状態が続いている、というのがひとつ。旅行計画が立て込んでいて、その資金を生み出したいということがひとつ。それ以前に、今抱えていることが多すぎて、時間的にも気持ち的にも余裕がないことも大きい。
それと、日本の現状を見つめていると、考えなくてはいけないこと、取り組まざるを得ないことが、あまりにも増え過ぎてしまっているとも思う。3.11 から間もなく3年。世の中、少しはロジカルに考える方向に進むかとも期待したのだが、現実は全く逆に進んていて、そんなナイーブな願いなど儚い夢。そうした中、音楽を聴くより優先すべきことが山積していると考えてばかりいる。
そんな大きな問題から話を元に戻すと、レコードも CD も買わなくなったもうひとつの理由はジャック・ブレルの没後35周年記念ボックスを手にしてしまったこと。
ブレルは今でも一番好きなフランスの歌手(彼はベルギー人だけれど)。アナログ盤はそれなりに持っているし、昔 Barcley から出た CD 10枚セットも持っている。LD や DVD も出れば買ってきた。なので、もうこれ以上は必要ないと思っていた。
どうもブレルは5年ごとにコンプリート・ボックスを出しているようで、パリやマルセイユでそれらを目にする度に(何年経っても売れ残っている)迷いながらも、毎度パスしてきた(変型ボックスが取り扱いにくそうでもあったので)。
それが、昨年夏に出た 21枚ボックスだけは、魔が差して買ってしまった。「未発表音源」が大量に含まれていたし、リマスター・サウンドは自分が所有する CD の音よりも遥かに良いだろうと想像できたし。
そして、これが大正解! もう素晴らしいの一言。初期の若々しさ、晩年の穏やかさや、オランピア・ライブの暴れ馬のような力なんかが昔から大好きだったけれど、今回じっくり何度も聴き返してみて、中期の充実振りに圧倒された。音楽を聴いてこれほど心が打ち震えたのはいつ以来だろう。
ブレルさえ聴けるならば、もう他には何もいらない。そんな気分がずっと続いている。これは Billie Holiday の Columbia 録音のコンプリート・ボックス 10CD を聴いていた時の気分にそっくり。実際ここ半年、ブレルばかり聴いているような気すらしている。
若いころのように、大量の音楽を浴びるように聴くことは、時間的にも体力的にも難しくなった。(加えて、仲間たちが相次いで倒れていく。)そんな今なるべくは、自分が本当に愛する音楽だけとゆっくり向き合いたいと思う。このボックスは、そんな自分にとって正しく一生モノです。
(ブレルに関して語りだすと止まらないし。それは自分の役割でもないと思うので、今回気がついたことをひとつだけ。彼の晩年の代表曲 "Ne Me Quitte Pas" の未発表トラックのひとつが、なんとタブラだけをバックに歌っている。こんな録音があったとは! これにはちょっとびっくり。)
この21枚組ボックス、12000セット限定だそう。でも、そんなに売れるとは思えない。多分5年経っても残っているでしょう。その没後40周年になる 2018年には果たしてどんな音源が新たに登場するのだろう?
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