読書メモ:ミシェル・ウエルベック『素粒子』

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 フランスの小説家ミシェル・ウエルベック、『地図と領土』に続いて『素粒子』を読了。

 『地図と領土』を読んでも感じたが、相当な博学ぶりと頭の明晰さが伝わってくる。それと同時に、巷の評判通りにとことん嫌な奴って感じも漂ってくる(顔写真からはそんな印象を受けないのだが)。

 主人公(のひとり)が専門域を代表する天才、彼に寄り添う絶世の美女、近未来にまで及ぶSF的な一代記なども『地図と領土』と共通する。これがウエルベックの作品のテンプレートなのだろうか。

 余りに過剰な性描写の連続に辟易しながらも、中盤からグイグイを引き込まれて行った。人間として生まれてきたこと、人間として生きて行くことの悲しみを、ギュッと凝縮していく。考えつく限りの悲哀のパターンを寄せ集めただけなのか、それとも現代の傑作なのか。とにかく切ない。

 時おりハッとする明晰な表現が頻出して、ウエルベックは深い次元で物事を捉えていることが分かる。ただ、生きる哀しみと、最先端の科学技術と、セクシャリズムとがどう結びつくのか、(文学音痴の自分には)理解しきれなかった。そうした意味でも、これも再読必至の一冊(レユニオンで生まれて以降の自身の人生体験を色濃く反照していることは間違いない)。

 現在いずれも絶版だが、『プラットフォーム』、『闘争領域の拡大』 、『ある島の可能性』も読んでみようと思う。


(続いて読んでいるのは、トム・マッカーシーの『もう一度』で終盤に至っているところ。なので『素粒子』をまだ冷静に反芻できていない。)






by desertjazz | 2014-03-20 00:00 | 本 - Readings

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