2014年 03月 30日
読書メモ:リサ・ランドール『宇宙の扉をノックする』(2)
リサ・ランドール『宇宙の扉をノックする』を読了。面白かったー! ここで軽く紹介してからも、また小説ばかりにどっぷり浸かってしまって、最初の方だけ読んでツンドク状態(以前に書いたことのいくつかは当っていないな)。それが読書再開後は一気にゴール。
前著『ワープする宇宙』が余剰次元宇宙(3次元を超える多次元宇宙)の可能性に焦点を当てていたのに対して、今回の舞台は CERN / LHC、大型ハドロン衝突型加速器が解き明かそうとする素粒子と宇宙のありようについて紹介している。
LHC と密接な関係にある最先端の物理学/宇宙論と、科学的思考法にまつわる興味深い話とが半々。数学/物理にとって極めて重要なスケールの概念、科学と宗教とが共存しうる関係性、などなどの論旨展開はさすが。フランスとスイスの国境域に建設された CERN の施設が運転を始める時、小さなブラックホールが生まれて地球(と宇宙)が呑み込まれると騒ぎになり訴訟まで起こされたことはまだ記憶に新しいが、そのようなブラックホールが生まれる可能性のないことの説明もとても分かりやすい。
著者は、難解な最先端の理論の説明などは高速で駆け抜け(初出のキーワードを説明抜きで使うことも度々)、難しい内容ほど詳細な説明は省いているが、それが成功している。半端に語っても専門家以外にはどうせ分からないだろうし、それなら分かった気にさせた方がいい、と考えたのだろうか。でも、さすがにプランク長やブレーンという言葉に馴染みがない人にはチンプンカンプンな箇所もあるかな?
繰り返し力説される「科学的思考」の効力、「スケールを意識すること」、そしてそれらを「政治、経済、政策などの各方面の指導者」たちにも求めるリサ・ランドールの言葉がとても響いた。(P.570 など)
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感想をもっと綴っておきたいところだけれど、遡って『ワープする宇宙』を再読し始めたり、『素数の音楽』などの数学に関する本をいろいろ読み始めているので、それは後回し。純粋な論理概念である数学と、極小を扱う素粒子論と、極大を扱う宇宙論とが、閾なく一体化していることを思い出してワクワクしている。
それにしても、物理や数学という超リアル(現実)を読んでいる時に最も現実逃避できるというのは、何と言う皮肉なのだろう。
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