Movie "The Act of Killing"

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 話題の映画 "The Act of Killing" を渋谷の Image Forum で観て来た。日本公開3日目、平日初回にもかかわらず大入りで満席(-1)だった。開場ほどなくに着いたので、見やすい席で観られてひと安心。

http://aok-movie.com/

 1960年代にインドネシアで100万人単位の大虐殺がなされた。その実行者にそれを再現する映画を製作させ、その過程を映画化した、不思議な入れ子構造のドキュメンタリー。

 流れるインドネシアの景色を見て「しばらく行っていない、行きたいなぁ」とか、「主人公のコンゴって名前はかっこいいなぁ」とか、「コンゴ、ムチャおしゃれ! 同じ服を着て出て来ない! 相当モテたんだろうな」とか、「隣の爺さん、ガム噛むのをやっと止めたと思ったら、鼾かき始めたよ、参ったなあ」とか余計なことを思っているうちに話は進行。

 まず、インドネシアという国では、政治家と役人と軍人とヤクザもんとマスコミとが一体となっている構図が実に分かりやすい。何ら隠しだてせずに笑って語られるものだから、ウソじゃない?と思ってしまうほど。(でも、日本も今この姿を目指しているのだと思う。本質は変わりなく、どれだけそれが表面に出ているかの違いだけ。)

 ドキュメンタリーなのに、どこまでが真実なのか、どの部分がコンゴ(監督)の演出なのか、どこからが映画監督の演出なのか、次第に分からなくなってくる。非常にシリアスな話が展開していくのに、ふっとジョークなのかユーモアなのか分からない絵が度々挟まって、これは笑いどころなのかと迷う(マツコデラックスみたいな奴が脇だし)。

 最初は誰もが虐殺話を自慢たっぷりに、そして共産主義撲滅に一切疑問を持たずに語るのだが、それが次第に変容していく。クセなのかどうしても分析的に観てしまって、不自然なカットが気になるのだけれど、それでも数人に瞬間何かのスイッチが入ったところを捉えているのが、この映画の肝だと思う。そしてそれがストーリーを脚本あったかのような結末に至らせている。

 それしても、よくこんな映画が完成まで辿りついたものだ、空中分解しなかったのが不思議だと思う。(余談だが、エンドロールで Anonymous がこれだけ延々続く映画ってのも初めて観た。)

 観終えた後も、エンドシーンと冒頭のダンスシーンとの対比をリフレインしてしまう。確かに凄い映画だ。今年観た中では(と言っても本数少ないけれど)"Dallas Buyers Club" に次いで良かったな。




(Anonymous に関しては公式HPにこう書かれている。インドネシアの良心がこの映画を実現させたと言えるだろう。/ その意味では、チンピラたちに金をせがまれて、イヤイヤ差し出す商人たちの暗い視線がとても印象に残っている。)
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 この映画については何人かと感想をやりとりしているところ。その間に思いついたことを書き加えたくなるが、それを始めたら止まりそうにない。語り口がとても多い作品だと思う。





by desertjazz | 2014-04-15 00:00 | 美 - Art/Museum

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