2014年 09月 02日
New Disc : 2 Face Idibia "The Ascension"
トゥーフェイス 2 Face Idibia の最新作 "The Ascension" はなんと言う完成度なのだろう。
アフリカのソウルやラップ/ヒップホップは所詮アメリカを真似ているものなので、本家アメリカの音楽を聴く方がいい、とかつて教えられたことがある。けれども、例えば南アやセネガルのヒップホップが独自の発展を遂げているように、アフリカ発のそうした類の音楽(アフロアメリカン・ミュージックと書くのも変?)にもそれぞれ個性的な魅力があると思う。また別な言い方をすれば、コート・ジヴォワールの Tiken Jah Fakoly が世界最高水準のレゲエを作り続けているように、アフリカのアーティストが世界最高水準のソウルやヒップホップを作ることだって不可能ではない。そのことを今体現している代表的存在がナイジェリアの 2 Face なのではないだろうか。
2 Face は BlackFace との活動や3人組 Plantashun Boiz 期を経て 2004年にソロ・デビュー。最初のシングル、200%の甘さたっぷりな "African Queen" がいきなり大ヒットして、一気に大スターに。その彼が7月にリリースした最新アルバムがナイジェリア直送で届いた。
冒頭2曲はやや凡庸なパーティー・ミュージック。それが3曲目からグイグイ耳を捉えて離さなくなる。単にメロディーがいいとか、アレンジがいいとか、歌がいいとか言うのではなく、細やかな神経が隅々にまで行き届いた極上ソウル。ちょっとナイジェリアンな訛りを感じさせるライミングもいい。本場アメリカの R&B とさえ対等に渡り合えるメロウでハート・ヒーリングなチューンの連続。うーん、たまらない。
そして10曲目あたりからラストにかけては、カリビアン 〜 ズーク 〜 スークース(リンガラ)〜 アフロビート 〜 ソカと畳み掛けて大盛り上がり。ナイジェリア音楽の大ベテラン Sir Victor Uwaifo も1曲ゲスト参加というサプライズ(あのペナッとしたエレキギターが聴ける)。楽しい曲ばかりで、気分が弾むなぁ!
これはアフリカの人々にとって今年を代表するアルバムの1枚になるんじゃないだろうか。
"African Queen" から10年、"Face 2 Face" (2004年)、"Grass 2 Grace" (2006年)、"The Unstoppable" (2008年)、"The Unstoppable International Edition" (2010) 、"Away & Beyond" (2012年) ときっちり2年ごとにアルバムを発表してきて本作が6枚目。2 Face も遂にここまで辿り着いたかと感慨深し。昔はルードな悪ガキって印象だった彼も、今ではまるで R Kelly のようなポートレイトだ。何と言ったって、近年ではアフリカのミュージシャンの年間所得番付10傑の常連だしな(記憶では、昨年は同じナイジェリアの P Square に次いで3位くらいで、Youssou N'Dour よりも上位だったか?)。そんな今の彼の姿が新作のサウンドにもしっかり映っている。
日本のアフリカ音楽ファン/ワールド・ミュージック愛好家からは見向きもされそうにないけれど、(ほろ酔い気分で)個人的には現時点で年間ベストに入れたくなってきた。
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