Ijaw K7 : Pereama Freetown (3)

 Pereama Free Town and His Youths Stars of Nigeria の "Pereama 92 Vol.5" はやっぱり名盤だなぁ。猛スピードなビートの嵐は腕利きたちが集まったサルサバンドがハイライフ・ロックを演奏しているかのようなカッコ良さで、聴いていてアドレナリンが出まくる。

 そんな彼らの音源を探し続けているのだが、LP や CD はみつからないし、試聴できる曲もネット上には全くない。そもそも Pereama Freetown (Pereama Free Town) なるミュージシャンの経歴すら何も分からないのだ。

 しかし、彼は1994年に "Vol.7" をリリースして以降、90年代後半から2000年代前半にかけても活動していたことは間違いない。また現在も現役である可能性が高い。

 Pereama Freetown の90年代後半〜00年代前半の作品と思われるカセットが手元に5本ある。

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Pereama Freetown "Pereama Is Alive" (Make 65)
Grand Master Pereama Freetown "Happy Birthday to Jesus" (Make 120)
Grand Master Pereama Freetown "Jesus Is My Boss" (Make 130)
Grand Master Pereama Freetown "Cenima Akpo" (Make 140)
Grand Master Pereama Freetown "My Love" (Make 160)

 注目すべき点は His Youths Stars of Nigeria の表記が消え、彼個人の名義となっていることだ。推測するに、何らかのトラブルでバンドを解散、あるいはバンドと袂を分ち、ソロへと転身、"Pereama Is Alive" を宣言し活動再開したのだろうか(?)最初の "Pereama Is Alive" はまだギターバンド・ハイライフをやっているとはいえ、それ以前と較べると明らかにパワーダウンしている。

 そして、後の4作はキリスト賛美の曲ばかり("Cenima Akpo" のB面曲のタイトルは "Jesus Come Take Me Go")。ギターバンド・ハイライフも数曲あるが、ほとんどがまったりした腰抜けサウンドなのだ。Pereama Freetown も「その方向」に進んだのだろうか?("Happy Birthday to Jesus" のB面ではリンガラをやっている。)

 ナイジェリアの北方ハウサの人々がイスラムを信仰するのに対して、南のヨルバや東のイボ、イジョの間ではキリスト教の信者が多い。その影響からキリスト系の音楽も人気が高く、ナイジェリアン・ゴスペルといった音楽ジャンルがあるくらいなのだ。

 ナイジェリアの大衆から特に愛されているミュージシャンのひとりに Yinka Ayefele がいる。彼は車いすのシンガーで、ナイジェリアン・ゴスペルのスーパースター。CD を多数リリースしており、ライブでも大観衆を集める。試しにネットで検索すると、そうした音源や動画はいくらでも出てくることだろう。彼がやっているのは、ジュジュ・ミュージックやリンガラ(スークース)をベースにしたキリスト賛歌といった音楽なのだが、これが物凄く退屈。本場アメリカのゴスペルの素晴らしさに対して、同じイエスを讃え感謝する音楽でもこうした軟弱なものが、ナイジェリアを含めて世界中にはびこっているのはどうしてなのだろう。

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(Yinka Ayefele の主要作品)

 経緯は分からないが、Pereama Freetown もイエスへの信仰心を強めたことと引き換えに、ミュージシャンとしての力も魅力も失ってしまったようだ。


 余談。King Sunny Ade と並ぶジュジュ・ミュージックの大物 Ebenezer Obey も一度音楽界を引退し、神父(だったか?)になったのだった。ナイジェリアではそれほどにキリスト教の求心力が強いということなのだろう。






by desertjazz | 2014-09-11 00:00 | Sound - Africa

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