読書メモ:デオン・マイヤー『デビルズ・ピーク』

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 理由(わけ)あって昨年暮れからサンフランシスに滞在。そこでついでに2週間現実逃避。いい気分転換になった。

 読書も軽めのものをと思い、行きのフライトではピエール・ルメートルの『その女アレックス』を、帰りにはデオン・マイヤーの『デビルズ・ピーク』などを読んでいた。

 ルメートルの『その女アレックス』は昨年「これミス」等々で軒並み1位になった大ベストセラーのミステリー小説。それなら一応読んでおくかと思って手を出した。確かにプロットは良くできていて、こうした構造の小説は確かにこれまでなかったのかも知れない。

 一方のデオン・マイヤーは南アのミステリー作家。先に読んだ『追跡者たち』(上・下)はいくつかの謎が解消されておらず、内容も幾分散漫に感じたのだったので、読むかどうか迷った。けれども、子供に対する性犯罪の多さや、小児を犯すことで HIV が直るという迷信が流布する現状を捉えた南アの社会的小説として読んでおく意味はあるだろうと思ったのだった。そして実際読んでみると、こちらの方がずっと良かった(まだまだ詰めは甘いのだけれど。例えば、刑事と娘との関係描写が軽すぎる、など)。昨年のベスト10に入れたくなったほど。

 面白かったのは、2冊の作品が予期せず何かと共通点を持っていたこと。どちらも連続殺人事件を巡るミステリーなのだが、両者ともに子供(少年少女)に対する犯罪(殺人、性犯罪、虐待など)が小説の芯たるテーマとなっている。『その女アレックス』が犯罪者側と捜査側とがパラレルに進行するのに対して、『デビルズ・ピーク』の方は3つの話が小刻みに同時進行する。また、殺人容疑者を追った末に真犯人と事件の真相を明らかにした時、刑事が下した判断も相似形で、悲惨な話の中でここが救いになっているとも言える(刑事ドラマにありがちなエンディングではあるが)。

 数々の登場人物たちに、「生きる」意味と「死ぬ」意味も考えさせられる作品でもあった。



(午前5時羽田着のフライトで帰国し、自宅に入るなり飲み始め、ほろ酔い気分で書いています。)






by desertjazz | 2015-01-12 07:00 | 本 - Readings
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