2015年 01月 26日
読書メモ:デビッド・クアメン『エボラの正体 死のウイルスの謎を追う』

今月発売になったばかりのデビッド・クアメン『エボラの正体 死のウイルスの謎を追う』を早速読了。2012年に出版された "Spillover" からエボラに関する部分を抜粋し加筆した日本版。
過去数十年間にアフリカ各地で繰り返されたエボラのアウトブレイクや、エボラに感染しかけたウイルス研究者のエピソードなどを丁寧に紹介していている。新書1冊分程度の内容の読み物で、分かりやすく書かれているため、2013年末に西アフリカで発生したパンデミックに近いアウトブレイクでエボラに関心を持ったような人には相応しい入門書だろう。
しかし、個人的に期待したような新しい情報はほとんどない。
1990年代にはアフリカに繰り返し足を運んでいた。そのためザイールのキクウィト Kikwit でエボラが発生した1995年のその前後には、必要に迫られて、そして個人的関心から、エボラを含めて熱帯ウイルスに関する文献を貪り読んだ。だからなのか、この『エボラの正体』を読んでも当時得た知識をおさらいしている印象を受ける。

いやそれもあるだろうが、新しい情報がないと感じたのは、エボラに関する謎が20年前と変わらず謎のままな証拠でもある。エボラの宿主はどの生物なのか、エボラはいかにしてアフリカ各地に飛び火したのか、インターバルをもってアウトブレイクが起こるのは何故なのか。いずれの謎にもまた決定的な答えは出ていない。
それでも今回知ったことがいくつか。
・「エボラ出血熱」という言い方には語弊があること。必ずしも出血が伴うわけではないので、最近は「エボラウイルス熱」と呼ばれている。
・宿主をコウモリだと狙いを定めた研究が進んでいること。地球上に住む哺乳類の種の4分の1はコウモリで(P.140)、このコウモリが真犯人である可能性の高いことについて納得のいく説明がなされている。
うーん、一昨年に読んだジャック・ペパン『エイズの起源』もそうだったけれど、ウイルス話を読んでいると知的刺激がビシビシ飛んでくる。
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エボラのアウトブレイクが頻発するようになった要因のひとつとして、森林伐採が招いたエボラの宿主の住むアフリカの森の縮小が挙げられている。そして、アフリカ熱帯材の多くが日本に輸出されていることも「解説」で語られている。(P.194)
藻谷浩介らによる『里山資本主義』を読むと、日本の木材(森林資源)は十分には活用されておらず、森の荒廃が放置されているようなことが書かれていた。最近の急速な円安によって輸入材の価格上昇に起因すると思われる木材製品の値上がりが始まっており、今年以降は新築住宅の値上がりも予想されている。
両者を合わせて考えるならば、アフリカからの木材輸入を減らし、日本産の建材をより活用すべきなのではないか、といったことも考えた。
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