読書メモ:ガブリエル・ガルシア=マルケス『生きて、語り伝える』

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 ガブリエル・ガルシア=マルケスの自伝『生きて、語り伝える』を読了。昨年暮れから少しずつ読み進めていた。想像を超える面白さで、このままどこまでも思い出話が終わらないで欲しいと願ったくらい。こんな読書体験などそうそうない。それをとうとう読み終えてしまった。

 コロンビアのみならずラテンアメリカを代表する作家ガルシア=マルケスは、若い頃から何と濃密な日々を過ごしていたことだろう。ある意味で恵まれた家系に生まれた一方で、経済的には苦難の連続。そうした暮らし振りが連綿と綴られる。その行間からは自分が生まれ育った土地への、家族への深い愛情が浮き上がってくる。

 彼の若き日々の破天荒振りを初めて知った。殺されかけるほどに危なげな女性遍歴、万引きによる読書、酒とタバコ。女性好き、音楽好き(巧みな絵描きでもあった)の背景もよく分かった。

 そして、驚くべきエピソードの連続。どれも話ができすぎで、しかもそうした逸話が多すぎる。もしも全部が作り話だと明かされたとしても信じてしまいそうなほど。数例を挙げてみたいとも思うが、それは野暮だろう。

 後半第5章以降はコロンビアの内戦も含めた政治情勢の話が厚くなり、かの国の歴史に疎い自分には掴みきれない下りも多くなる。しかし、ガルシア=マルケスがその歴史の証人であり、また歴史を幾分か動かした当事者でもあったことを知ることになる。彼のジャーナリズム作品もいくつか読んできたが、ノーベル賞作家がなぜそうした文章も書いてきたかの経緯もようやく詳しく知ることができた。

 ギリギリ綱渡りのような生き様、とても深い人間関係に、羨望の気持ちも膨らんでくる。できればこれは学生時代に読んでみたかった。もしそれができたなら、自分の生き方も違っていたかも知れない。これは是非とも若い人たちに読んで欲しい1冊だ。

 ただ惜しむらくは、彼の自伝がこの1冊目で終わってしまったこと。ガルシア=マルケスは昨年亡くなったので、2冊目の刊行はないだろう。それでも、この続きをどうしても読みたい。続編の断片でも草稿でも残されていないのだろうか?


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 トマス・ピンチョン全小説を読み終えたので、次はガブリエル・ガルシア=マルケスの全小説を読み切ることにしよう。まずは『短編集 枯葉』の再読から始めようと思う。


 



by desertjazz | 2015-03-15 21:00 | 本 - Readings
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