2015年 12月 04日
Paris & Marseille 2015 (#5) : Temenik Electric - Arabic Rock from Marseille
アラビックロック・バンド、テメニック・エレクトリックが、2013年にリリースしたファースト・アルバム "Ouesh Hada?" からセカンド "Inch'allah Baby" で劇的に進化。これは2年という時間がもたらしたとものいうより、ジャスティン・アダムスの参加(Mix and Additional Productions)と Real World Studio 制作というプロダクションの勝利だろう。
古から文明・文化の交流点であり続けるマルセイユは様々な音楽を育んできた。シャンソン、オペレッタ、ライなどのマグレブ音楽、インド洋とのミクスチャー、ポリフォニー・コーラス、レゲエ/ラガ、ヒップホップ、等々。アフリカ、カリブ、南米などの音楽も受容・吸収しながら現在に至る地中海随一の港町。そんな歴史的な邑から新たに飛び出したのはマルセイユをベースに活動するアルジェリアンたちによる強力なロックサウンドだ。
前作 "Ouesh Hada?" は特別な可能性を感じさせる作品だった。その一方で、ワンフレーズに頼った曲が並び、自己満足さがまだ残っていてどこかアマチュアリズムから抜け出し切れていないなど、正直かなり消化不良な面も感じた。
それが 11/20 にリリースされた新作 "Inch'allah Baby"(『インシャラ・ベイビー』)では、重心がどっしり座ったサウンドに変化。余裕と貫禄のようなものさえ自然と伝わってくる。基本はワイルドな歌とツイン・エレキを中心としたラウドなロック。そこにアラビックな響きが混じり合い、モロッコの黒人音楽風なエッセンスも効いている。そして、とにかく曲がいい。こうした辺り、随所にジャスティンのサポートがあったのだろうか。
十分期待に応えるこのセカンド・アルバムよりもさらに良かったのがパリで観たライブ。充実したレコーディングの成果がエネルギッシュなライブ・サウンドに昇華している。思わず興奮してしまい、右手に生ビール、左手に一眼レフを持ったまま、踊り続ける結果に。彼らはライブ・バンドなんだな。10月に観た約20本のライブの中でもベストのひとつだったと思う。
(2年前に書いた記事を読み直すと、自分が期待した方向に進んでくれていることが分かる。)
テメニックのプロダクションからは随時連絡をもらっているのだが、彼らはミクスチャー・ミュージックという観点を重視しているようだ。最近も「マルセイユはオクシタンとオリエントがミックスアップするユニークな実験室だ」なんてことを書いてきた。全く同意! やっぱりマルセイユは面白い!
パリを襲った同時テロの後にパリとマルセイユで予定されていた新作リリース・ライブは「ストレンジな雰囲気」の中で行われたものの、それでも無事に終えたとのこと。彼らのライブもまたどこかで観たい。
(Press Kit 今回も力が入っている。)
Special thanks to Olivier Rey & Sonia Nisi.
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