バーバ・マール Baaba Maal の新作 "The Traveller" がなかなかの力作だ。ロックでブルージーでポエティックでダンサブル。ここ数日聴き狂っている。
「新作」とは言っても、今年1月15日にとっくリリース済みのアルバム。「年明けに新作を出す」と昨年アナウンスがあったことをすっかり忘れていた。それを先月の旅の終盤、ナントのフナック fnac で目にして買ったのだった。
Johan Hugo(誰だ?)と供に、ロンドン(Abbey Road Studios 含む)とダカールの様々なスタジオで録音し、入念に作り上げた作品。重低音を強調したダイナミックなサウンドが際立ち、ロックビートと柔らかなエレクトリック・サウンドと西アフリカ伝統楽器との交配振りが印象的だ。大名盤 "Djam Leelii" を思い起こさせるアコースティック・ギターを中心とする静謐な調べは切々と心を打つ。若い頃の刺々しさがなくなり包容力豊かに聴こえるバーバ・マールの歌声もとてもいい。
そうしたエッセンスが詰まった1曲目 "Fulani Rock" がまずカッコいい。バーバ・マール自身によるデザート・ブルース調なエレキギターとドライブするリズム。正にフラニ・ロックだ! 前半3曲はパワフルなロック調ナンバーが続き、のっけから圧倒される。
中盤3曲は、旅人でありノマドである(自身が属する)フラニ人を見つめ、旅人であった漁師一家の出自を振り返るようなテーマが続く。穏やかに始まり幾分地味なトラックで中休みかと思いきや、途中からは躍動感溢れるポップなダンス・チューンへと展開。タイトル曲 "The Traveller" の高揚感が最高だ!
終盤3曲は力強い「ポエム」。最後の2曲 "War" と "Peace" は、ペル Peul の笛(ペル=フラニ=フルベ=プール)とコラ Kora をバックに、コラボレイター Lemn Sissay(誰だ?)の入魂のライム/ラップがフローする(バーバ・マール、歌では脇に回る)。
ユッスー・ンドゥールといい、ダーラJといい、セネガルのミュージシャンたちは(他の多くのアフリカのアーティストもそうだが)歌にメッセージを込める。バーバ・マールは近年欧州のメディアに出演して様々なメッセージを発してきた。今回 "War" と "Peace" の2曲は、それらの対称的なテーマの取り上げ方もさることながら、
両者の歌詞を自身のウェブサイトに掲載している。そんなところにもより良い世界を追い求める彼の姿勢と発信者たるアーティストとしての矜持を感じる。
(バーバ・マール、これが最新作かと思いきや、8月にも新作を発表していた。早速今聴いているところ…。)
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