"Little One" - 1 to 10000

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 先日、入手アルバムの総数が10000に達した。長年音楽を聴いている割には少ない? 本もたくさん読みたいし、美味しい酒も飲みたいし、1年に数回は旅行にも行きたい。なので、レコード買うのも音楽を聴くのもほどほどに抑えている。

 買ったりもらったりしたアルバム(レコード、CD、カセット)は1枚目から、入手日、価格、購入店を記録し続けている。さほど買わないだろうと見越して、10インチ、7インチ、映像作品(ビデオ、LD、DVD、BL、など)については記録していない(が、これらも大量に所有することになるとは!?)。基本的に入手盤は売ったり処分したりせず、2枚組以上やボックスも相当数あるので、LPとCDだけでも1万数千枚手元にある計算だ。

 記念すべき10000点目はシカゴの最新作、ライブ5枚組 "Chicago Live : VI Decades Live - This Is What We Do -"。これを10000点目にしたのには、最初の1枚目がシカゴだったこともある。高校生の時に友人がプレゼントしてくれた "Chicago XI" が自分にとっての1枚目(ハジレコ)。

 さて "VI Decades Live"。さほど期待せずに聴いてみてビックリ! 録音は King Crimson の "Earthbound" 並?に悪いのだが、1978年に事故死したギタリスト、テリー・キャス Terry Kath 在籍時のライブの素晴らしいこと。初期のシカゴはテリーを中心とするインプロビゼーション集団だったのだということを改めて確認した。選ばれた音源はヒット曲を並べるのではなく("Hard To Say I'm Sorry" ですら収録されていない)、彼らのインプロビゼーションにフォーカスすることを狙って制作されたアルバムだと感じた。(組曲も含めると)16分を超えるトラックが4つもあるほど。あるいは初期の代表曲やヒット曲を並べると自然とこうした流れになるという見方もできるかもしれないが。

 ところでハジレコ "Chicago XI" は今でもよく聴く大愛聴盤。テリーが書いた "Mississippi Delta City Blues" や、珍しくトランペッターのリー Lee Loughnane が書いた "This Time"、ゲストの Chaka Khan が強烈なヴォーカルを披露する "Take Me Back To Chicago" もいいが、何と言っても "Little One" の素晴らしさがアルバム最大の聴きどころ。シカゴの長い歴史の中でも恐らく最も美しい曲だろう。

 面白いのは "Little One" の作者がドラム奏者のダニー Danny Seraphine だということ(Rufus の David "Hawk" Wolinski との共作)。シカゴといえば、まずはテリー中心のバンドと見なされ、超名曲を一番書いているのはボビー Robert Lamm であり、初期のヒット曲を数多く書き、ステージの盛り上げ役でもあるトロンボーン担当のジェームス James Pankow が目立っていた。なので地味な印象だったダニーがこんな素敵な曲を書いたのは意外だった。結束力の強さで知られるシカゴというバンドを彼が突然馘になった理由と合わせて、"Little One" が書かれた経緯について知りたいと思い、彼の自伝 "Street Player" (2011) を買ってみた。まだ一部しか読んでいないのだが、"Little One" のこともしっかり書かれているようなので楽しみ。

"Little One" を歌っているのはテリーで、生まれたばかりの彼の娘への呼びかけとなっている。'Ooh my little one, I am sorry for the pain you've felt' なんて歌詞もあるのだけれど、、、まさかそれが現実になるとは。1978年1月、娘が2歳になる前に「拳銃の暴発事故」でテリーは突然亡くなる。

 その娘 Michelle Kath Sinclair は当然父の記憶を持たない。そんな彼女は父の実像に迫ろうとテリーのドキュメンタリー映画の制作を決意し、数年前にクラウドファウンディングで資金を募っていた。そのことをすっかり忘れていたのだが、いつの間にか映画 "The Terry Kath Experience" は完成し、最近 Blu-ray も市販された。


 この映画、テリーの未亡人がプライベート・ムービーをかなり保存していて、ファンにとっては見応えある作品になっている。特にカリブーランチの様子や、最後にギター(テリーの代名詞的存在だったあのギター)を「発見」するシーンはいいな。事故死した経緯についても当然詳しく語られる。興味深かったのは、ジミ・ヘンドリックスとテリー・キャスが一緒にアルバムを制作するアイディアがあったこと、そして死の直前から彼のソロ・アルバムをシカゴの象徴でもあるホーンズ抜きで制作することが具体化していたこと。どちらも聴いてみたかった。

 この映画を通じて感じたのは、やはりシカゴはテリー・キャス中心のバンドだったということ。私の音楽人生最大のアイドルはボビー・ラム(ロバート・ラム)であり、シカゴも彼を中心に聴きがちだが、それとは別に、彼らのサウンドの核はテリーのギターと声だったことは認める。

(1984年にシカゴが来日した際、ボビーに会ってサインもいただけた。それはユッスー・ンドゥールに会った時よりも嬉しかった。私にとっての最大のアイドルは、ユッスーでもなく、スプリングティーンでもなくて、やっぱりボビーなんだと思う。)

 ダニーの自伝 "Street Player" がテリーの事故死の話から始まることからも、シカゴの中心はまずはテリーだったことが窺われるし、"VI Decades Live" を聴いてもテリーのアグレッシブでソウルフルなプレイが強烈で、同じ印象を受ける。Disc 5 はドイツでのライブのDVDなのだが、これを観ても、テリーとダニーを繋ぐラインがライブサウンドの中心であることが伝わってくるなぁ。


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(ライブ盤の写真もテリーがメイン。)


 シカゴは結成50年を超え、来年はレコード・デビュー50周年になる。今でも多くのファンに愛され、コンサートの度に大勢の観客を集めることは良いことだ。けれども、未だにテリーの残した音楽を聴き続けている人間なので、今のシカゴには興味が湧かない。でもデビュー50年を機にもう一度くらいライブを観ておこうかな?




 Quadrophonic Mix (4ch Mix) Box も高いが買って持っている。だけど、どのようなサラウンド・システムを組むか迷い続けており、まだ聴けていない。

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by desertjazz | 2018-04-30 15:00 | 音 - Music

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