マイケル・ヴィール Michael E. Veal が新作 "Michael Veal & Aqua Ife : Volume 2" を近日リリースすると発表。
"Volume One" がリリースされたのが 2011年だから、7年ぶりとなる。それで思い出して、彼の幻のファースト・アルバム "Michael Veal + Aqua Ife / Afro-Kirlian Eclipse" を久しぶりに聴いてみた。やっぱりこのアルバムは凄いね!

イエール大学の音楽学者であるマイケル・ヴィールのことはどれだけ知られているのだろう。まず彼はフェラ・クティ研究の世界的権威の一人。"Fela: The Life and Times of an African Musical Icon" (1999) はフェラに関する文献の中で最高の1冊の一つなので、一読する価値はあるだろう。ただし、辞書にも載っていない用語(造語?)も多用されていて、かなり難解。
フェラ・クティ研究の第一人者でありアフロビートに造詣が深いということで、トニー・アレンの自伝本 "Tony Allen: An Autobiography of the Master Drummer of Afrobeat" (2013) の共著者でもある(Introduction を書いている)。この本、ムチャクチャ面白いので、フェラのファンなら是非ご一読を!
驚かされたのは、"DUB" (2007) を出版した時。彼がジャマイカ音楽にも詳しく、こんな大著を著わすとは考えていなかった。この本、『DUB論』(2010)と題して邦訳もされましたね。
そのマイケル・ヴィールのもう一つの顔はミュージシャン。自身のバンド Michael Veal + Aqua Ife ではベースを演奏している。
10数年前に完成しながらも発売に至らなかった "Afro-Kirlian Eclipse" なのだが、久々聴き直して改めて唸ってしまった。1曲目 "Sunship"、2曲目 "Super Nova"(Wayne Shorter のカバー)はアフロビートとビッグバンド・ジャズのミックスといった様相。ボトムの重いサウンドに震えます。そこにエレクトリックな要素やノイズなどが絡む。個人的には最高のアフロビート・ジャズだと思っている。#もしこの作品について記憶している方いるとすれば、菊地成孔さんとの対談がその理由だろう。菊池さん曰く「これすごい。素晴らしい。」(『聴き飽きない人々 〈ロックとフォークのない20世紀〉 対談集完全版』2007年、P.27)。そうでしょ! 菊池さんにお聴かせしたのは、私が一番好きな "Super Nova"。これを聴いて連想するのは菊地雅章 "Susto" 収録の "Circle/Line"。 強烈なループ/グルーヴ感って、両者に共通していると思う。だから、DCPLG で "Circle/Line" をカバーしている菊地さんが反応するのは当然でしょうね。
さて、マイケルの新作 "Volume 2"、彼からの私信によると、"Super Nova" も収録されているとのこと。彼の最高作がようやく正式リリースされる! それはどのテイクになるのだろう? "Afro-Kirlian Eclipse" のマスターテイクでも構わないのだが、今改めて聴くと演奏にもミックスにもブラッシュアップする余地が大きい。ライブでの演奏も重ねてきているので、きっと完全な新録になることだろう。
新作を心待ちにしながら、"Michael Veal & Aqua Ife : Volume One" や彼がソプラノ・サックスを吹いている異色作 "Michael Veal's Armillary Sphere / Anyscape" (Rec. 2008) を聴くことにしよう。