Sax Legend of Dakar - Thierno Koite

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 ここ最近聴いているのは "New Cool Collective Big Band Featuring Thierno Koité" (Dox Records, 2017)。Youssou N'Dour / Etoile de Dakar / Orchestra Baobab 関連の作品は全て入手したいと思って集めているが、このアルバムの存在はつい先日まで見逃していた。かつてユッスーの Super Etoile de Dakar に在籍し、オーケストラ・バオバブ Orchestra Baobab での活動も続けるサックス・プレイヤーのチエルノ・コイテ Thierno Koité が、オランダのビッグ・バンドと共演していたとは。

 New Cool Collective はオランダを拠点とする19人編成のジャズ・バンド。彼らが2012年にセネガルのダカールとサンルイでコンサート出演した際、バオバブのステージを観て、そこでチエルノと出会ったことが、このレコーディングに結びついたそうだ。

 この New Cool Collective はアンサンブルを中心としたポップなジャズ・バンドといった印象で(曲によってはメイナード・ファーガソンあたりに近い)、このアルバムでもチエルノのソロを全面展開している訳ではない。しかし、冒頭のチエルノ作曲(イドリッサ・ディオップ Idrissa Diop との共作)"Myster Tier" は、彼らしいンバラとアフロ・キューバンのミックスがビッグ・バンドのスタイルで再演されている。3曲目 "Moussa Caravelle (Tribute to Emilien Antile)" もチエルノの筆によるポップなナンバー。4曲目 "Padee" は African Jazz Pinoneers の南ア・ジャズを連想させる。New Cool Collective とチエルノとの共作曲も4つあって、中でも "Yassa" の高揚感溢れるホーン・アンサンブルは痛快だ。

 New Cool Collective とチエルノはライブ共演も果たしており、そのシングルがオランダで500枚限定でプレスされている(現在オーダー中で、到着待ち)。

 チエルノ・コイテはバオバブのキーパーソンとして活動するかたわら、ソロ・アルバムも2枚発表している。

・Thierno Koite "Teranga" (JFC Music, 2004)
Thierno Koite "Ubbite" (JFC Music, 2005)

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 いずれもアフロ・キューバン/サルサを中心としたアルバムなのだが、幾分凡庸な仕上がり。チエルノの経歴としてこれらより遥かに重要なのはル・サヘル Le Sahel の方だろう。

 ル・サヘルは、1972年にダカールで開業したナイトクラブであり、そこのハウス・バンドとして1974年に誕生したバンドの名前でもある。中心メンバーは、リーダーの Cheikh Tidiane Tall(ギター、オルガン)、Idy Diop(ヴォーカル)、そしてチエルノ(サックス、フルート)。他に Seydina Ihsa Wade(ギター)、Papa Djiby Ba(ヴォーカル、ギィロ)など、セネガル音楽に詳しい方ならご存知だろう名前も。

 彼らは短い活動期間の間に1枚だけレコードを作っている。

・Le Sahel "Bamba" (Musiclub, 1975)

 このアルバム、サルサ/アフロ・キューバンをベースとしながらも、そこにウォロフのリズム、さらにはロックやソウルなどのエッセンスを混ぜ込み、ウォロフ語でも歌うことで、従来のラテン・カバーから抜け出したものになっている。セネガルの独自色強いほとんど最初の作品であり、セネガリーズ・ポップ史上の大名盤、最重要作のひとつだと、個人的には長年考えている(この後触れるル・サヘルのリユニオン作の解説を読み直したら「("Bamba" の)タイトル・トラックは初めて録音されたンバラの曲」と書かれていることに納得)。なので、もし自分が自由にアフリカ音楽をリイシューできるなら、このアルバムを最初に出すだろう(ダカールで買ったボロボロのジャケットのレコードしか持っていないことでもあるし、、、。ちなみに現時点のマーケット・プライスは100ドル前後。全曲解説書こうかと思ったが、まずは聴いてみてください。ネットで検索すれば簡単に聴けます)。

 ル・サヘルはそれだけ重要なバンドながら、恐らく多くの人々に知られないままだった。そんな彼らが再結成し、2015年にアルバムまでリリースした時にはさすがに驚いた。

・Le Sahel "La Légende de Dakar" (Celluloid, 2015) 

このアルバム、1975年のファーストで取り上げた Larry Harlow の "Caridad" を再録音し、New Cool Collective と共演した "Master Tier" の元ヴァージョンも楽しめる。

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 こうした録音を聴いているうちに、久しぶりにチェルノたちに会いたくなって、オーケストラ・バオバブのライブ日程を調べてみたら、1本だけ、来年5月5日にパリの Philharmonie de Paris での公演が予定されていた。しかし予定メンバーのリストの中にはなぜかチエルノの名前はなし。

 Africando に行ったメドゥーン・ジャロ Medoune Diallo は仕方ないとしても、バオバブのマジカルなリズムの核だったギタリスト2人、バルテレミ・アティッソ Bartélemy Attisso とベンジェルーン Latfi Benjeloun が前作 "Tribute to Ndiouga Dieng"(2017) には不参加。このアルバムは、コラの導入もあって、バオバブらしさがかなり削がれた不本意な作品になってしまった印象が強い。タイトル通り、シンガーのンディウガ・ディエンが世を去り、残念なことだけれど、再結成バオバブの最盛期も過ぎてしまったのだろう。しかし、"Tribute to Ndiouga Dieng" のプロデューサーとして名を連ねたチエルノまで不参加のバオバブのライブって、どうなのだろう? そんな思いにかられながらも、やっぱり彼らのライブをまた観に行きたくなっている。会場も素晴らしく(一昨年にユッスーを観た、クラシック用のコンサート・ホール)、半年以上先のコンサートなのに良席はすでに完売。オーケストラ・バオバブの人気はまだまだ根強いようだ。






by desertjazz | 2018-11-05 17:00 | Sound - Africa

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