マルセイユ入手盤(2):ベルベル/シャウイ系

 ウアムリア奈津江さんが、ベルベル系シャウイの伝説的歌手アイッサ・ジェルムーニ Aissa Djermouni と彼のアルジェリア盤CDを紹介され話題になった。それ以来、私も彼直系の音楽により注目するようになっている。マルセイユのベルザンスでは、そうしたシャウイ系のCDが色々手に入る。情報が乏しくて、ベルベルの中でも誰がシャウイ系なのか判断がつかない面もあるのだが、ライのルーツとも繋がるようなベルベルの土着的な伝統音楽をいくつか取り上げてみたい。

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 1995年にリリースされた "Anthologie Du Rai" は充実したコンピレーションだった。その中でライのオリジネーターとして紹介された、リミティ Rimitti とシェイク・エル・ハマダ Cheikh El Hamada に次いで取り上げられていたのが、シェイク・エル・ママチ Cheikh El Mamachi だった(Vol.1 のジャケットには彼の顔写真?)。葦笛ガスバとフレームドラム(ベンディール?)だけを伴奏にコブシたっぷりに歌われる、アクの強さやアーシーな感覚は一緒なのだが、アイッサの方が遥かに荒々しい歌だ。恐らくママチの方が随分後年の録音なのだろうと推測されるのだが、いかんせん全く関連資料が見つからない("Anthologie Du Rai" の解説にもフランス語への歌詞抄訳があるのみ)。呪術的でありながら、実に味があって、今度のマルセイユ探索の大きな収穫となった。

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・Cheikh Mohamed El Mamachi "Fi Had Majlisse" (Edition Fraternelle no number)
・Cheikh El Mamachi "Vol.1" (Edition Fraternelle No.369)
Cheikh El Mamachi "Vol.3" (Edition Fraternelle No.06)
・Cheikh Mohamed El Mamachi "Vol.4" (Edition Fraternelle No.430)
・Cheikh Mohamed El Mamachi "Vol.7" (Edition Fraternelle No.402)
・Cheikh Mohamed El Mamachi "Tayara" (Edition Fraternelle No.410)
・Cheikh Mohamed El Mamachi "Vol.12" (Edition Fraternelle No.420)
・Cheikh Mohamed Mamachi "Krim El Glaub Wajbi" (Edition Fraternelle No.432)


 シェイク・エル・ママチの CD がこれだけ出ているのなら、シェイク・エル・ハマダもあるはずで探してくるべきだったと、帰国後に気がついた。ハマダの録音は"Anthologie Du Rai" 以外にもいくつかのコンピレーションに1〜2曲ずつ収録されているが、まとめて聴きたい歌い手だ。Spotify で検索してみると6タイトルあり、どれもいい。これらの CD は次回のフランス滞在で探してみたい。


 ミロウド・エル・ヴィアラリ Cheikh El Miloud El Vialari も良かった。ハマダやママチと比較するとずっと端正な歌い口。録音も良く、動画もネットに複数アップされているので、現役の音楽家なのかも知れない。シンプルな繰り返しのようでありながら、時折ゾクッとする瞬間が来る。

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・Cheikh El Miloud "Kissat El Hadj" (Edition Noudjoum Wanchariss CD77)
・Cheikh Miloud Vialari "Vol.1" (Edition Noudjoum Wanchariss CD79)
・Cheikh El Miloud El Vialari "Vol.3" (Edition Noudjoum Wanchariss CD125)
・Cheikh El Miloud Vialari "Vol.4" (Edition Noudjoum Wanchariss CD147)
・Cheikh El Miloud Vialari "Vol.5" (Edition Noudjoum Wanchariss CD148)


 今回買ったカビールやシャウイといったベルベル系音楽CDで、まだ聴いていないものが手元に数十枚。アルジェリアの音楽は知るほどに奥が深く興味深い。しかし、とにかく各音楽家に関する情報がなくて、紹介しにくいことに困っている。その点、ウアムリアさんの書かれた記事『カビールとシャウイ 注目を集めるアルジェリアのベルベル系音楽』(ミュージック・マガジン2008年1月号 P.84-89)や彼女のブログ『ビバ!アルジェリア』は大変参考になった。だが、より詳しく知るためには、フランス語でも構わないので適当な文献が欲しいところでもある。

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 (続く。残りの未紹介のアルバムについては、また別の機会に。)






by desertjazz | 2018-11-07 00:00 | Sound - Music

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