読書メモ:クロード・レヴィ=ストロースの『野生の思考』

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 ピーター・エイムズ・カーリンの『ブルース・スプリングスティーン アメリカの夢と失望を照らし続けた男』とクロード・レヴィ=ストロースの『野生の思考』を、2週間かけてじっくり精読。今年の完読 71冊目と72冊目。

 まずはレヴィ=ストロース『野生の思考』。

 レヴィ=ストロースはこれまで『悲しき熱帯』(『悲しき南回帰線』)しか読んだことがなく、彼の代表作『野生の思考』くらいは、いつか読みたいと思い続けてきた。今回まとまった時間が持てたのでようやく挑戦を決意。しかしここまで難解だとは想像外だった。「本書はレヴィ=ストロースの著作の中でも格別に難解なものとして知られている。」(訳者あとがき P.362)のだそう。知らなかった!

 読みにくさの理由としては、覚えのない専門用語(それも一学者個人が定義づけし使用しているものも多い)が頻出していること、個々の単語・用語を厳密に日本語へと変換することがほぼ不可能なこと、文章が冗長で構文的にも分かりにくいことなどが挙げられる。この本は原文のフランス語で読まない限り、十分な理解などできないに違いないと思ったほどだったが、きっとフランス人にとってもこの難解さには大差ないことだろう。

 サルトルの『弁証法的理性批判』を解さず、レヴィ=ストロースの他の著書(研究書)も読まずに、この『野生の思考』に挑むことが、そもそも無謀だったのだろう。おそらく内容の1割も理解できていないに違いない。

 それでも、この書籍が書かれるより以前の「野生(野性)の思考」という捉え方が誤りであって、原生的/後進的に思える人々の多くの方が、名付けに関してははるかに複雑かつ見事な構造(といったもの)を持ち、しかもそれらが遠隔した別民族同士で共通項を有し、さらには現代人の思考との共通点や逆方向に対照する奥行きさえ持っている、等々の、論考の骨子だけはある程度把握できたと(勝手に)思っている。

 また、レヴィ=ストロースの論述を支える北米・南米・オーストラリア・メラネシアなどの文化人類学的なフォールド調査の成果の数々が実に興味深かった。どの民族も現代欧米人との接触・交流・混交が進み、彼らの文化の一部あるいは大部分が失われ、こうしたサンプル収集がもはや未来にわたって不可能であることを思うと尚更である。

 その一方で、何度読み返しても文章が把握できなかったり、本当だとは思えないようなロジックに疑問を抱いたりすることが、ほとんど全てのページにあった。息絶え絶えに読み終えて、こんなことならレヴィ=ストロースや構造主義についての概論書を先に読んでおくべきだったとも考えた。しかし、原典に取り組み、自分の限界を越えようとする中で、作品に味わいを感じることもまた、読書の醍醐味なのだろう。







by desertjazz | 2018-11-25 20:00 | 本 - Readings

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