アミナッタ・フォルナ『シエラレオネの真実 父の物語、私の物語』(原題:"The Devil that Danced on the Water")を読了。ブラックダイヤモンド、少年兵、武装集団による民衆虐待(四肢切断、レイプ、等々)と陰惨な印象の強い西アフリカのシエラレオネの現代史を振り返る意味で読んでみた。
著者のアミナッタはシエラレオネ人の父とスコットランド人の母の間に生まれた女性で、現在はジャーナリストとして活躍中。その彼女の父モハメドは、かつて財務大臣を務めたものの、首相との意見対立をきっかけに政界を去る。しかしその後、無実の罪で逮捕され処刑されることに。1975年、アミナッタ10歳の時に襲った悲劇だった。
それから25年、彼女はあらゆる資料に当たり、インタビューを重ねる(父を陥れることに与した者も多い)ことで、自分の半生を振り返り、父の晩年の姿を描き出していく。
周辺に不穏な動きが起こる度に、イギリスやナイジェリアに逃れるなど、絶えず命の危険に晒されたアミナッタの子供時代はなんとも凄まじい。実母との別れといった辛い出来事も重なる。そして、父が殺されるに至った経緯の真相を知ろうとする彼女の忍耐力、精神力にも想像を超えるものがある。そうして浮かび上がった父モハメドの信念はただただ立派であるとしか言いようがない。単に暗澹たる話で終わらせていないところにも救いが感じられる。
詳細な取材の結果だろうか、登場人物は割合多くて、馴染みない名前が覚えきれない。また時制が激しく現在と過去を往復するための読みにくさもある。明らかに日本語としておかしなところなど、校正がやや緩いところも残念。
それでも、アミナッタの綴る「父の物語」「私の物語」は、シエラレオネの歴史を照射し、シエラレオネの人々にとっての「私たちの物語」を紡ぎ出すことに、ある程度まで成功している。あくまで個人史が主なので、基本知識として巻末の「シエラレオネの歴史的背景」を先に読むことをお勧めする。
(余談になるが、この辺りは、まるでブルース・スプリングスティーンが Springsteen On Broadway で 'I want to know your story, my story' と呼びかけ、「父の物語」を切々と語った情景をまた思い出してしまった。ネタバレになるので、これ以上は書かないが。)
アフリカの悲惨な歴史、それは日本人にとって他人事に映りがちだ。この本もアフリカに対する個人的興味から読み始めた。しかし、アフリカのことを知るより、今の日本の状態についてもっと考えるべきだという思いが頭から離れなくて、何とも落ち着かなかった。堤未果が『日本が売られる』の中で「今だけカネだけ自分だけ」と表現する、無能な為政者や権力者(そして大企業の経営者も)の姿は世界共通。「口封じ」ひとつを取っても、我が国は「破綻国家」の手法を後追いしているという怖ささえ感じた。
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