◆ロビン・ケリー『セロニアス・モンク 独創のジャズ物語』
◆カール・オーヴェ・クナウスゴール『わが闘争2 恋する作家』
◆奥野克巳『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』
◆スティーヴン・ウィット『誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち』
今年読み終えた本の中で印象に残った10冊。順位づけはなし。リストは読んだ順。初めて出版されたのが今年でないものも一部含まれている。
完読は86冊で、今年も100冊に届かず(毎年書いている通り「数じゃない」が、最低でもこれくらいはと自分に負荷をかけている)。1月にニューヨーク、6月からドーハ、アルメニア、ジョージア(グルジア)、10月にはマルセイユと、海外だけでも3回旅行したので、それらの準備にずいぶん時間を取られ、また旅行中も読む時間がなかった影響が大きい。
結構豊富な年という印象だったのだが、振り返ってみるとさほどではなかったかも。決定的に面白い小説とは出会わなかった。一番楽しく読めたのは、マルセイユ滞在に合わせて読み始めたアレクサンドル・デュマ『モンテ・クリスト伯』全7冊。よくできた大衆小説だった。
トップ3を選ぶなら、『ソロ』と『雪の階』と『日本が売られる』だろうか。特に『雪の階』は構成も文章表現も素晴らしい。場つなぎ的なささやかな挿話と思ったものまでが、重要な伏線となっている。見たことない漢字や初めて知る表現が頻出するのに、スラスラ読めてしまうから不思議。文章の美しさはフロベールの『ボヴァリー夫人』に匹敵するレベルとさえ思った。主人公、笹宮惟佐子にすっかり惚れてしまったよ。それだけに、最終章の謎解きにはかなり失望させられた。
『日本が売られる』は大変よく調べて書かれている。この本によって多くの日本人の眼が開かれたはず。矢部宏治『知ってはいけない 隠された日本支配の構造』とともに今の日本人にとって必読の2冊。
『ソロ』はまさしく「摩訶不思議な」長編小説。コーカサスとニューヨークという舞台設定に今年の自分との縁も感じた。第一楽章のクオリティが第二楽章まで続いていればもっと良かったのだが。(前作『東京へ飛ばない夜』も読んでみたが、同じ「妄想」を起点としながら、この落差はなんなんだ! これだけつまらない小説は記憶にない。)
角幡唯介は、『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』や『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』の方が緊迫感があり深くて好きだけれど、今後は『極夜行』が彼の最高傑作と語られるのかも知れない。
音楽書も大量に読んだ1年、『セロニアス・モンク 独創のジャズ物語』が圧巻だった。あくまでモンク寄りの立場から書かれたストーリーだとは思うが。
(『雪の階』は図書館で借りたので写真はなし。音楽やアフリカ関連の資料を中心に蔵書が4000冊?を超えて自宅に置き場所がなくなったこともあり、今年は図書館の利用が一気に増えた。)