"Roots in Reverse" を読み終えてのメモ、今回はセネガルのレコード・レーベル、ンダールディスク N'dardisc に関する話。
このレーベルは、1960年代後半、スターバンド脱退後の Dexter Johnson や Laba Sosseh のレコードをいつくかリリースしているので、セネガルのアフロキューバン音楽について調べるとき、自然とそれらを聴きながらの作業になる。その過程で、このレーベルは彼ら以外のレコードもいろいろ出しており、またある程度の数、自分の手元にあることにも(最近になって)気がついた。それでも、ンダールディスクは所詮はダカールの弱小レーベルに過ぎないと思っていた。
ところが、昨日、深沢美樹さんが Facebook に投稿された記事を読んで驚いてしまった。
ンダールディスクは、サン=ルイにあったレーベルのソポフォンを興りとし、多数のSPを制作してきたと言う。そして「ソポフォン~ンダールディスクこそセネガル音楽の老舗レーベル、名門レーベルとの感を強くしたのでした。」と結ばれている。見事な分析で、拝読して思わず唸ってしまった。しかも Radio Africa のサイトにンダールディスクのディスコグラフィーがあると書かれているではないか。早速チェックしてみると、「西アフリカを対象とした最初の業録音レーベルのひとつ」といったことさえ書かれている。このレーベルがそれほど重要視されていたとは知らなかった。
このディスコグラフィーを見て「これもンダールディスク盤だったのか!」と知ったレコードが数枚。そうしたことにも今まで全く気がつかなかった。
ところで、ンダールディスクの7インチとLP盤は何タイトルあるのだろう。そのような興味は以前から持っていて、今回このディスコグラフィーと自分の所有盤とを照合してみた。手元にあるLPは Idy Diop の 33-15 までで、7インチは 45.08 から 45.26 までほぼ揃っている。Radio Africa のディスコグラフィーもそれぞれ 33-15 と 45.26 で終わっており、Discogs でも同様。よって、12インチの最終番号は 33-15、7インチの最後は 45.26 だった可能性が高い。また 45.07 より前の7インチはどこにも記載されていないので、存在するとすれば相当なレア盤なのだろう。
このディスコグラフィーをじっと見て気づいたことがもうひとつ。前々回の記事で紹介した Sexteto Habanero と同じEPが載っている。そのレコードを見直すと 'DISTRIBUTOR EXCLUSIVO - L. FOURMENT - B. P. 2477 DAKAR' と記載されているではないか。L. Fourment はンダールディスクのオーナーで、アドレスもンダールのものだ。と言うことは、この BEFOR はンダールディスクのサブレーベルということか?(No 17.01 というナンバーは 17センチ盤の1枚目を表していると推測。)
ンダールディスク盤に限らずセネガルのレコードには LA RADIO AFRICAINE とスタンプが押されたものがとても多い。多分70年代頃の有名なレコード店だったのだろうと想像していたが、今回の深沢さんの文章を読んで、その点に関しても合点が行ったのだった。Dexter Johnson & Le Super Star de Dakar "Live a l'Etoile" (Teranga Beat TBLP 019, 2014) のライナーの Djibril Gaby Gaye の文章にも、同様な興味深いことが書かれている。
'At the time Dexter was in Senegal, we did not have a vinyl pressing plant. We had very few record shops, for example the RADIO AFRICAINE of Bernardot in Avenue Jean Jars, close to the "a l'toile" where Dexter was playing. He did manage to record a few 45s here, but the fabrication was done in France - we never had a pressing plant here, never. N'Dardisc was doing the recordings, which were sent to France for production.'
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ンダールディスク盤について調べていて、最近知ったことが他にもいくつか。
45.10 は Laba Sosseh et son Orchestre Vedettes Band の7インチ。Vedettes Band はラバ・ソッセーが International Band の次に組んだバンドなのだが(数ヶ月で解散したらしい)、このクレジットを見ると何とオーケストラ・バオバブのイッサ・シソッコが参加しており、1曲ではアレンジも担当している。1967年の録音なので、もしかするとイッサの初録音だったのでは?と想像したりして。
"Roots in Reverse" を読んでいると、イディ(イドリッサ)Idrissa Diop (Idy Diop) のことについても書きたくなった。しかし、彼に関してはとっくに書き上げていたことを思い出したのだった。今はもうこれほど詳しくは、とても書けない。
これらを読み直すと、彼の極初期の録音に Rio Band de Dakar がある。聴いてみたいなと思っていたら、そのンダールディスク盤が7インチ箱から出て来て、自分でもびっくり。
その Idrissa の最新アルバムは、昨年リリースした "L'aventurier" だ。アフロキューバンではなく、Youssou N'Dour、Kine Lam、Omar Pene、Ismael Lo などのンバラ・カバー集で、今でも元気な歌声を聴かせている。
(続く)
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