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読書メモ:リチャード・フラナガンの『奥のほそ道』、三浦英之『牙』


 オーストラリアの作家リチャード・フラナガンの『奥のほそ道』読了。1942〜43年に日本がタイービルマ間に敷設した泰緬連接鉄道の建設工事の悲惨さ壮絶さが伝わる小説。いわゆる「神の視線」的な文体に疑問を持ったが、ブッカー賞を取ったことも頷ける濃密な文章。

「傑作のなかの傑作」と評価されているようだが、それだけの作品だろうか? 終盤には凄みを感じたが、都合よく書き終えたようにも思える。それほどまでに作家自身が扱いに苦慮した大作とも言えるだろう。

 終盤には安倍(小学生)に伝えるために書かれたような文章もあったが、どこだったかな? 歴史小説でありながら、ここでの描写が近未来予言とも取れる恐ろしさを、今の日本に感じている。

 最も印象に残ったのは、人生の無意味さを語っているところだったな。自分も老いて、そのことを切々と感じる。(虚しくなるので、それ以上は語らない。)




 三浦英之『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』読了。読み始めて即座に「やばい!」と心の中で叫ぶ。アフリカ象が今後10数年で絶滅しかねない危機に瀕しているとは知らなかった。1989年のワシントン条約で象牙の国際取引が全面禁止になり、95年2度目のボツワナ旅行でチョベ国立公園の水飲み場に集まる200頭を目にして安堵したのは甘かった。その後、頭数調整とやらで輸出再開しておかしいな?とは思ったのだが。

 作品としては読み応えたっぷり。だがそれは楽しいからではない。まるでフィクションを読んでいるようでいながら、現実であることを思い出して絶望的になる。

 三浦英之の本を立て続けに読んでいるが、この著書も冴えている。アフリカゾウの未来の有無が、日本人がどう行動するかにかかっていることは、多くの人が知っておくべき。日本国内での流通も含めて象牙取引の全面禁止がどうしても必要なことが、これを読むとわかる。


 →→→ 日本政府、象牙取引を今すぐ禁止に!



 以下、余談。

 アフリカゾウはボツワナやジンバブウェで何度かずつ見ている。数メートルの至近距離からも数度。一度はロッジの屋外で食事中、テーブルの脇を悠然と通りすぎた。もう一度は、深夜寝ている部屋の柱に体をこすりつけてきた。どちらもゾウに手が届く近さで、楽しく貴重な体験だった。

 来月のアフリカ某国への出張が取りやめに。久々訪れる国(ゾウも見られるはず)、楽しみにしていたので残念! 10回目のアフリカ旅行は、どうやら自力で行くことになりそうだ。




 5月以降やっと月10冊ペース近くまで戻ってきた。







by desertjazz | 2019-07-15 17:00 | 本 - Readings
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