最近の読書

*Facebook からの転載(2)

 今年は、依頼殺到する仕事と旅行と読書に明け暮れて、音楽を聴いたり音楽について語ったりする時間がなかなか取れない。どうやら 2019年はこのまま終わりそう。それでも音楽情報はこまめに Facebook やTwitter にはアップしているのだが、Blog に整理するまでの時間が全然ない。せめてもと思い、最近のメモのいくつかをまとめて転載しておこう。


 以下、最近の読書メモを転記。



11/5


 本日の収穫

『ジャン・ルーシュ 映像人類学の越境者』と白戸圭一『アフリカを見る アフリカから見る』。白戸さんの新著をようやく購入。お元気でいらっしゃるかなぁ?

 読みたいアフリカ関連の書物もどんどん溜まってきた。


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11/19


 この夏にヴァルター・シュピース関連の文献を読み直したら、とても面白く刺激的で、その後もバリについての本を読み続けている。今月は、ミゲル・コバルビアス『バリ島』、小沼純一『魅せられた身体 旅する音楽家コリン・マクフィーとその時代』、東海晴美・大竹昭子・他『踊る島バリ 聞き書き・バリ島のガムラン奏者と踊り手たち』、大竹昭子『バリの魂、バリの夢』、高橋ヨーコ+中川真『サワサワ』の5冊を再読。今日は阿部知二『火の島 ジャワ・バリ島の記』のバリ・パートを再読。ここ2週間でバリ本だけで10冊目だ。

 しばらく前にも書いた通り、10数回バリに通った後に読むことで、書かれていることの理解が深まるし、集中して大量に読むこと寄って各々の間の連関が共振し合って実に興味深い。今まで見過ごして来たことの発見も多く、今更ながらにバリの全体像が眼前に構築されて行くようだ。特筆すべきは大竹昭子さんの2冊の面白さ。彼女の旅から30年たった今読んでも、面白い。いや、今読むからこそますます意味があるのかも知れない。

 バリとインドネシアに関する文献は手元に100冊程度あるはず。この機会に全て読み直したくなっている。


『魅せられた身体』は、広い音楽知識に基づいた分だけ有益な情報も多いが、試論の域に止まっている。その『魅せられた身体』で、音を描いていることで評価されている『サワサワ』も正直ピンとこない。2冊とも初読時と感想変わらず。


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11/19


 今年これまでに読んだ中で特に良かったのは、島田周平『物語 ナイジェリアの歴史』(中公新書)。単に一国の歴史ではなく、常にアフリカ史、世界史に位置付けて書かれれている。最近の情勢に到るまでバランスよく、無駄もブレもない(だから、冒頭とラストが結びつく)。新書3冊分の内容はある、新書以上の新書だ。(フェラ・クティについての短いコラムもある。)


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11/24

 この夏、ヴァルター・シュピースについて調べ直したのを契機に始めたバリ本の再読。今日は板垣真理子『魔女ランダの島・バリ「癒しとトランスを求めて」』を一気読み。副題通り、ヒーリングやトランスに関する内容が主だったためか、初読時の印象がほとんど残っていなかったのだが、23年振りに読んで、板垣さんの取材と考察の深さに、今頃感心させられた。

 読み重ねることで、情報や記述が結びつく面白さのあることは、先日も書いた通り。板垣さんもまた、バリの音の魅力から書き始めていることにも惹かれた。バリの観光化が進むことへの懸念は20世紀初頭から叫ばれ、自分自身バリを訪ねる度にその変化を感じる。しかし、バリが持っている音の快感、空気の心地よさ(そして人の良さ)は、ずっと保たれ続けていると感じている。

『魔女ランダの島・バリ』はヴァルター・シュピースに関する文章で締められている。ここ数ヶ月のバリ読書もそろそろ一巡り、一区切りだろうか。しかし、板垣さんも触れられている、中村雄二郎『魔女ランダ考 ー演劇的知とはなにかー』も今度バリを旅する前に読んでおくべきかもしれない。でも、この本、途中で挫折してしまったんだよな。

 板垣さんの『魔女ランダの島・バリ』を読んでも、自分自身のバリ体験やバリを旅した/バリに住む友人たちから聞いたことが次々結びつく面白さがあった。「そうなんだよな」と呟いたり、「そうじゃなくて、、、」と頭をよぎったり。でもなぁ。。。

 自分が初めてバリへ旅したのは 1991年10月。それ以来(確か)13回この島を訪れている。合計の滞在日数はそろそろ200日になるだろうか。それでも、『魔女ランダの島・バリ』を読むと、自分はただ素通りしてきただけの印象を受ける。彼女のような体験、バリでは全然していないので。今度バリに行く時には最低1ヶ月は滞在すべきなのかと考えたりなどもして。いや、旅の深さはその日数によるものではないはずだろう。

 バリ本を読み重ねて、重大なことに気がついた。オランダに行くことがあれば、ヴァルター・シュピース(とインドネシア)の作品を観て来ようと決めていたのだが、2016年のオランダ旅行では、そのことをすっかり忘れていた(正確に書くと思い違いしていた?)。うーん、オランダにもまた行かなくてはいけないようだ?


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12/1


More Georgia !

 若い女性(20歳前後?)向けと思しきこんなムック "Maybe!" でもジョージア特集。試しに買ってみたら結構な情報量だ。来年の旅行に役立ちそうなページも。でも若者が旅するのに最大の障壁は、フライトの時間と価格だろうか?

 ジョージア再訪に向けて関連文献を読み漁っている。それらの中で最大の異色作はこの小説、アレキサンダー・レジャバの『手中のハンドボール』。主人公テムカとは現ジョージア(臨時代理)大使のティムラズ氏のことで、書いたのは彼の父親なのです。テムカ本人曰く「面白いよ!」とのこと。これから読みます。カバー絵はグルジア映画の紹介者としても有名なはらだたけひでさん。



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12/2

 ジェイムス・スーズマン『「本当の豊かさ」はブッシュマンが知っている』読了。ナミビアのブッシュマン(サン)を中心に、その歴史や暮らし、諸問題について詳述。その合間に現代人の生活にも疑問を投げかける。しかし、いずれにも解決策はないと思う。個人的には大変有益な本だった。じっくり書評を書きたい。

 阿部知二『火の島 ジャワ・バリ島の記』読了(再読)、そして金子光晴『マレー蘭印紀行』も読了。金子はなんて豊かで美しい日本語なのだろう。奥泉光『雪の階(きざはし)』やフローベール『ボヴァリー夫人』を連想した。

 今日は1日、エチオピアでのフィールド・レコーディング音源を聴いていた。約20年ぶりに聴き直したのだが、場末のバーの賑わいだとか、田舎の早朝だとか、労働者たちの歌だとか、改めて聴くとどれも雰囲気がいい。編集して作品にしてみようかな?

 その間も、ジョージアについてまた調べたり、アジアのいくつかのホテルとやりとりしたり、アフリカ諸国のホテルを探索したり、パリ行きの準備をしたり。頭の中で様々な音と情報が渦巻いていて、やや混乱気味。



12/2


 一昨日読み終えた、ジェイムス・スーズマン『「本当の豊かさ」はブッシュマンが知っている』で、参考文献としてこうした書籍が推薦されていた。久々パラパラ捲っているのだが、カラハリのブッシュマンは魅力的だ。2度旅したカラハリの記憶はいまだに鮮烈。再び行くことはあるだろうか?


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12/6

 しばらく前から気になり迷っていた、柳沢英輔『ベトナムの大地にゴングが響く』を買って読み始めた。この夏以降、バリのガムランについて学び直していて、同じゴングに興味を覚えたこと、秋にラオスを旅したこと、そして井口寛さんがミャンマーで録音した "VOICE OF NAGA" を聴いて、東南アジアの少数民族の伝統音楽に関心がますます深まったことで読む気になった。

 あとがきを読むと、川瀬慈さんは柳沢さんの活動も後押ししているとのこと。その川瀬さん編集の『あふりこ フィクションの重奏/偏在するアフリカ』はアフリカをフィールドとする研究者たちによる小説のような日誌のような作品集。まだ途中なのだが、思い切りアフリカへの旅に惹かれる。

 来年はアジアを巡るか、アフリカを歩くか、迷うなぁ。



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12/6

 マーロン・ジェイムズ『七つの殺人に関する簡潔な記録』も買った。厚いし、字は小さいし、高いし。だけれど、友人たちが絶賛しているので。年末の休みはこれを読んで過ごそう。
(ブッカー賞と早川には弱いのです。)

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12/7

 石毛直道『座右の銘はない あそび人学者の自叙伝』読了。アフリカやアジアの食の文化、農業の歴史などにとても興味があるので、石毛(と中尾佐助)の著作は目にとまる度に読んでいる。

 この本を読んで氏の活動の広さと多さを再確認。民博の設立過程、大阪万博実現に至る話などは貴重。ただ長年の「肩書き」を追った分だけ、面白いエピソードがごっそり抜け落ちた印象がある。それは編集後記を読むと尚更。

 現在普通に使われる「食文化」という言葉が、彼の「食の文化」という表現から生まれたことも知った。

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(フォントとサイズが揃わない。まあ、いいか?)






by desertjazz | 2019-12-07 18:11 | 本 - Readings

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