今週土日に九州で計画していたフィールド・レコーディングが延期になったので(コロナの影響ではなく、天候不順のため)、昨日2月29日(土)の夕方、「ナガのドラム」上映会(hako gallery)へと予定変更。井口寛さんが制作された映画『ナガのドラム』をやっと観ることができた。
ミャンマー(ビルマ)とインドの国境をまたぐ土地に暮らす民族ナガ、そのミャンマー側のある村で行われたドラムの制作過程を丁寧に追ったドキュメント。着眼点が良く、これは貴重な記録だと思う。
特に予備知識もなく観に行ったのだが、まず驚かされたのはドラムの巨大さ。優に10mはあるだろうか。一種のスリット・ドラムと言って良いと思うが、似た系統のナイジェリアのジャイアント・コンガ(Femi Kuti や Seun Kuti のステージでもおなじみ)よりも遥かに大きい。バリ島の巨竹ガムラン、ジェゴグでも最大4m程度だ。これほどバカでかいドラムを必要とするには、何らかの理由や人々のこだわりがあるのかと思いながら映像を眺めていた。
ノミを打ち込む時や運搬する時の労働歌のような唱和も印象的だった。ちょっとピグミーのコーラスなどを連想させるものがある。夜通し行われる「祭り」は、かつてのブッシュマンとの体験(トランス・ダンス)を想起させるものだったし、ドラムに木の棒を打ち付ける演奏法は、スペイン・バスクのチャラパルタとの共通点も感じさせた。世界の音は繋がっているのだなと改めて思う。
作業の様子、人々の表情、森や集落の情景もとても良かった。カメラが的確に映像を捉えている証拠だろう。映像加工、編集にも制作者のこだわりが随所に感じられた。ナレーションの声もいいし(スーパーは極力排除した分だけ映像を味わえる。ただ時々キーワードが頭に入って来なかったのは残念)。条件の悪い中でこれだけの記録をなし、1本の作品にまとめ上げたのは(しかも一人で)見事だ。
もちろん疑問点もある。ひとつは完成し小屋に納められたドラムの全貌と細部を見せ切っていないように思ったこと。時間的都合で撮影できなかったのか、大きすぎてレンズに収まらなかったのか、ドラムの周りに人が多すぎて望ましい撮影が不可能だったのか、制作・移動の過程で十分に見せたと判断したからなのか?
いや、恐らく取材の過程で井口さんの興味の対象は、ドラムからそれを作る人々へ移って行ったのではないだろうか。この映像作品の主人公はドラムでありながら、真の主役はナガの人々なのだろう。その証拠に、自分もナガの人々の暮らしぶりを直に見てみたくなっている。そんなことも考えた。
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