以下、Facebook からアレンジして転載。
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今度の大型連休にはジャン・ルーシュの映像作品もたっぷり観たい!
千葉文夫+金子遊 編『ジャン・ルーシュ 映像人類学の越境者』(森話社、2019)読了。ジャン・ルーシュに関する論考10編、ジャン・ルーシュの著作4編、インタビュー1編などを収録した、ボリュームたっぷりな1冊。エチオピア音楽の研究で常に注目している川瀬慈、翻訳された『洞窟のなかの心』や7年前に観た『レイモン・ルーセルの実験室』がとても面白かった港千尋、『バリ島芸術をつくった男ーヴァルター・シュピースの魔術的人生』で知った伊藤俊治という3氏の論考を特に楽しみに読み始めた。しかし最初の伊藤氏の文章が硬質すぎて、早々に投げ出したくなることに。それでもそこを抜けた後は、面白くて一気読み。
ジャン・ルーシュと言えば、ニジェールでの記録やパリを舞台にした映画でも有名だ(と今頃知った)が、個人的には何と言っても、マリのドゴン人による儀式シギを記録したフィルムだ。なので、一番興味深く読んだのは、千葉文夫による「グリオールとレリスのあいだに ドゴンの儀礼をめぐるルーシュの映像詩』だった。この本でも触れられている「一九九六年六月にNHK教育テレビで放送された番組「神話に生きるドゴンの民—壮大な叙事詩シギ」」(P.138)を昔観て、文字通り圧倒された(そのVTRはまだ持っていたはず)。ジャン・ルーシュの映画は、60年ごとに7年に渡って行われるシギを1967〜73年の間毎年記録した作品。これを観て、いつかドゴン人たちの住むバンディアガラの断崖に行きたいと願ったほどだ。でも、次にシギが執り行われるのは2027年、そう考えると現実味は薄いと感じたことを憶えている(このエリアは今 IS の影響が及んでおり、コロナ禍の収束が予想できない現状、ドゴンへの旅は叶いそうにない。次回のシギも撮影が計画されているようだが、果たしてどうなるか?)
ジャン・ルーシュ本人による文章も示唆するところが多くて、なかなか読み応えがある。解釈しにくい記述も含まれるのだが。アフリカ音楽愛好家にとっては P.270/271の観察は短いながらも興味深いもののはず。映画/ドキュメンタリーの制作論、撮影/録音に関する方法論なども、その思考や問題点は今に通じるものだ。いや、そもそも、現在に至るまでのドキュメンタリー制作の基礎を作り上げた一人がジャン・ルーシュだったのだということが、この本を読むと分かる。
ドゴンの記録は、マルセル・グリオール、ミシェル・レリスらによるダカール=ジブチ調査旅行(1931 - 1933)を継承する性格を有する。またニジェールで撮影された作品の数々も実に興味深い。なので、写真2枚目にあげた関連書籍も改めてじっくり読みたいところだ。
それと同時に、いやそれ以上に、ジャン・ルーシュの作品(200を越えるという)そのものを観たいと考えている。今では古臭く感じる表現手法が多いだろうということは想像がつく。しかし、初めてシギを観た時に感じた荒々しさ、異世界に対する興奮が蘇ることだろうと期待する。YouTube や Amazon を検索するとそれなりに引っかかる。まずは彼の代表作を鑑賞することから始めたい。
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最近読んだ中では、ラニ・シン編『ハリー・スミスは語る 音楽/映画/人類学/魔術』も面白かった。話題になっているし、ハリー・スミスが制作した "Anthology of American Folk Music" 6CD BOX はさすがに持っているので、気になって買った1冊。
これを読んで、その天才奇才ぶりを初めて知った。ジャズやフォークなど音楽面に止まらない多才さは驚くばかり。しかし、6つ目のインタビューに至っては完全に壊れている。狂人の独白か? 彼のフィルムも素晴らしいね。"No.1" から観始めたのだが、今度の連休、彼のフィルムも順番に観てみたいと思っている。
(この本についてはすでに各所で紹介されている通りなので、余計なことは書きません。)
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読書がようやく月10冊ペースまで上がってきた。今年読んだ中で断然面白かったのは、
ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』、そしてマーロン・ジェイムズ『七つの殺人に関する簡潔な記録』。後者は2段組700ページもある大作なのに、もう2回も読んで、さらにまた読みたくなっている。まるで麻薬だ。レビュー書きたいのだが、読む方に忙しくてなかなか書けない。
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