2020年 09月 17日
アフリカの記憶 121
Kalahari #21 : Botswana / CKGR-Gyom 1993
カロウチュバさんのデング(親指ピアノ)を撮影させていただいた。むき出しのただの1枚の板切れに、11本の鉄片をつけただけの極めてシンプルな構造。あとは下部にサワリの音を発する鉄の輪がついている程度である。アフリカ大陸のサハラ砂漠より南に広く分布する親指ピアノの中でも、とりわけ素朴なものだ。ハンシ・クラフトで買った親指ピアノと比べても、キーの数の少なさ、装飾のなさが際立っている。
だからこそだろうか、そこに物としての美しさを強く感じる。機能美以上の何かがあると思うのだ。
このような親指ピアノこそ欲しいと思い始めた頃、一人の男が似たようなデングを売りに来た(もちろんカロウチュバさんではない)。「普段から弾いているものならいらない。そのようなものは買えない」としばらく押し問答状態に。結局、第三者を交えて話をし、買い取ることに何も問題ないことを確認した上で、譲っていただくことになった。
親指ピアノの多くは廃材を利用して作られる。例えば、金属キーは自転車のスポークや針金を叩き潰して作る。移動生活をするため所有物の少ないブッシュマンにとっては、物への執着など特別ないのかもしれない。なので、彼らは必要ならまた作るのだろう。それでもその時は、自身に慎重な判断を強いたのだった。
大して弾けもしないのに、アフリカ各地で結構な数の親指ピアノを買い集めた。それらの中でも、このデングはとりわけ魅力的な音を響かせる。ポロポロと適当に爪弾くだけで、何とも不思議な雰囲気を醸し出すのだ。シンプルな楽器から生まれる、複雑で奥深い音。このデングは自分にとって大切な宝物になっている。
(海外アーティスト、特にアフリカの民族音楽系の中には、来日公演が終えた時点で、楽器を売る人もいるようだ。高い手数料を支払って国に持ち帰るよりも、売って金にしてしまい、帰国後にまた同じ楽器を作る方が合理的とも言えるだろう。昔、ある高名なバラフォン奏者が日本公演を終えてセネガルに帰国する際、演奏で使ったそのバラフォンを買わないかと声をかけられたことがある。値段を聞くと「100万円」。とてもじゃないが、手が出なかった。)
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