旅の追憶 #12

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 本物の旅を求めて 1988 - 2020

 これまでにも幾度となく書いたことだが、学生時代には海外旅行などに全く興味がなかった。しかし、大学院を出る間際、一度くらい外国に行ってみようかと何となく思い立ち、1988年、卒業旅行として初めて海外を訪ねることにした。選んだ先は中国。卒業旅行で人気なのはヨーロッパやアメリカだろうと思ってのことだったのだが、中国が一番人気であることを後で知った。あの頃は、それくらい海外旅行について何も分かっていなかった。

 中国から戻った翌週から会社勤め。そして、ある程度自由に休暇を申請できるようになってから、また海外旅行をしたくなり、今度はインドネシアのバリ島とタイのバンコクまで短い旅をした。さらに 1994年にはメキシコへ、1995年には、南ア、ジンバブウェ、ボツワナ、ザンビアを旅したことは、「アフリカの記憶」と「旅の追憶」で触れた。

 これらの旅で共通しているのは、日本往復のフライト以外は、ほぼ全ての移動を事前にブッキングしなかったこと、宿は予約して行かなかったこと、そして極力安く済ませようとしたことだ。1980年代から90年代前半くらいまでは、まだ『地球の歩き方』や Lonely Planet などの情報の影響力が強かった。なので、貧乏旅行が当たり前なのだと、すっかり刷り込まれてしまっていたのだった。

 初の海外、香港経由で入った中国3週間で特に記憶に残っているのは、長江の三溪下りだ。重慶から武漢までの3日間を船で移動した。今は巨大ダムにより流れがせき止められてしまったので、こうした旅はもう2度とできない。春とは言え曇り空の暗い日が続いたが、初めて目にする光景ばかりで楽しかった。しかし、とにかく寒かった。船内で体を洗う時、使えるのは共同の冷たい水シャワーのみ。3月でもまだ凍える寒さの中国内陸。気合を入れて冷水を浴びているうちに、次第にそれにも慣れてきた。

 バンコクでは一泊300円の安宿に泊まった。ベッド以外のスペースがほぼない激狭差で、シーツも交換しているのやら。案の定、全身虫に喰われた。バリでは Lonely Planet で選んだクタビーチの一泊500円の宿で過ごす。ここももちろん水シャワーのみ。

 就職してからも「僻地要員」と呼ばれ、5回出張した中国(トータル200日以上)では一泊約100円のトリプルルームに泊まったことも。エチオピアの地方町では、約80円の宿に泊まり、スプリングがむき出しになったベッドで寝たことさえあった。

 こうした旅では、とにかく毎度トラブル続きだった。列車やバスに間に合わず、危うく帰国便に乗り遅れそうになったことも幾度か。死に損なったことすらあった。今振り返ると、いずれもがほとんど奇跡だ。

 それが今では、事前に徹底的に調べ、マイレージを使った無料または格安のビジネスクラスのフライトを探し、Tripadviser などの情報を元にベストのホテルを最安料金で予約している(最近だと、ニューヨーク往復もパリ往復も JAL のビジネスクラスの窓側無料シートをギリギリまで粘って確保した)。そうしているのには、老人になってしまい、もう無理できないということもある。何より、日本にいる間に溜め込んだストレスを解消したいという思いもある。

 しかし、昔、特に計画を立てずに旅行した時の方が、記憶に残っていることは多い。最初の中国やタイやバリは、目的がまだ明確になっていなかった分、無駄やトラブルの多い旅ではあった。それでも、それらの全てが良い思い出として脳裏に刻まれている。とにかく、今旅しているのだという実感があった。

 過去を振り返る時、またそうした旅に出かけたくなっている。今年は、アフリカ南部(南ア、ボツワナ、ナミビア)とアフリカ西部(ガーナ、ナイジェリア、トーゴ)のどちらかを長期旅行する計画を立てていた。しかし、全く別の旅もいくつか心の中で抱き続けている。下調べはそこそこにして、移動も宿も事前には一切予約せずに、気の向くままに自由に半年くらい「旅」をしたいと思って。そのような旅を、いつか実現させられるだろうか。



 ひとつ訂正(デジカメを使い始めたのは2003年と書いていたかもしれないので)。

 デジカメを使い始めたのがいつか定かでなく、少々調べてみた。2001年の中頃にインドネシアやブラジルで撮った写真はキャノンのコンデジによるもの。前年2000年、アメリカ2度(ユッスー・ンドゥールを観に1泊5日の強行軍でニューヨークに行ったり、同じニューヨークでモンゴ・サンタマリアのご自宅を訪ねたり)、メキシコ、キューバの旅行ではデジカメを持って行った記憶がない。恐らく2001年から数年間はフィルムとデジタルを使い分けたり、2台併用したりしていたのだと思う。


 最初の1枚は、2001年にリオデジャネイロのファベーラ近郊で撮ったもの。


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 サルヴァドールの荒れた海を初めて目にした時は、ただただ感動した。ドリヴァル・カイーミが大好きだったので。


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 サルヴァドール近郊(多分サントアマロ?)での1枚。みんないい笑顔! やっぱりここでも子供たちを撮っている。1枚目もそうなのだが、子供がさりげなくパンデイロを手にしているのがいい。


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 これも同じ2001年、インドネシア、ジャワ島のソロで。グサンさん、ワルジーナさんと。


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 ソロ川のそばには、グサンさんが書いた名曲「ブンガワン・ソロ」の歌碑もあった。そのソロ川の写真も残っているが、まあそれはいいか。






by desertjazz | 2020-12-24 00:00 | 旅 - Abroad
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