Houcine Slaoui : The Father of Moroccan Chaabi <13>

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■モロッコ音楽中での位置づけ(再考:現代シャアビとの関係性)

「モロカン・シャアビの父」ホスィン・スラウイに関する徹底研究は、前回までの 12回で終了予定だった。しかし、書いているうちに、疑問点や語り尽くしていないことなどが浮かんできたので、若干補足しておきたい。

 まず、ホスィン・スラウイの経歴に関して明確になっていないのは、次の2点である。

(1)フランスへの渡航年
(2)パテ・マルコーニでの録音期間(初録音年と録音総数)

 これらに関しては、回を改めてもう一度検討することにしよう。

 モロッコ音楽全般についても、自分の知識が足りないことを悟った。例えば、

(3)ルワイスとハルカの関係性

 ルワイス rwais の演者たちはモロッコ南西部を旅して歩く存在で、それがマラケシュまで流れ着くようになったらしい。また、ルワイスは本来とても長く演じられるものだという。その間、語りだけだったり、簡単な伴奏を伴ったり。その語る内容は、時事ネタやゴシップなど。ということは、ルワイスとハルカ halqa の違いはどこにあるのだろう? もしかすると、実質的には同じ芸を指しているのだろうか?

 また、現代シャアビとの関係性について語る前に、

(4)50年代、60年代のモロッコ音楽(シャアビやルワイス)の検討、ホスィン・スラウイの音楽との比較

 といったことについて、もう少し掘り下げておくべきだったかもしれない。

 これら(3)と(4)の考察を行うに際して、大変有益な音源がいくつかある。まずひとつは、Dust To Digital のコンピレーションだ。

V.A. "Kassidat : Raw 45s from Morocco" (Dust To Digital DTD-32, 2013)

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 この CD、収録トラックがなぜかわずか6曲と少ないことが残念なのだが、拙ブログで以前取り上げた通り、シャアビやルワイスに関する解説がとてもいい。ホスィン・スラウイについても、真っ先に取り上げており、

Houcine Slaoui (1918-1951) was the most influential early chaabi artist, combining traditional Moroccan styles with contemporary elements from recording and cinema stars like Egypt's Mohammed Abdel Wahab and Farid El-Attrache. His 78 rpm records made for the French Pathé label during the 1940s were very popular. Slaoui's driving, yet melodic oud playing is often accompanied by flute, violin, or other arabic instruments, along with varied percussion and the call and response singing that is typical of Moroccan. Slaoui's style set the basic template for chaabi throughout the following decades until the 1970s.

と、とても適切な紹介がなされている(ただし、生年を 1918年とするなど、至らない部分もあるが)。特に重要なのは、ホスィン・スラウイの音楽が 1970年代に至るまでモロッコのシャアビの礎になったという指摘だ。

 もうひとつ取り上げておきたい音源は、昔 El Sur Records が制作した2枚の CD-R である。

V.A. "Koutoubiaphone Berbere 7inch Special!" (El Sur Records CDR-00)
V.A. "Morocco early 1960's Koutoubiaphone: Berber Dance & Rwayes! Vol.II" (El Sur Records CDR-13)

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 これらは確か、サラーム海上さんがモロッコで買い付けたクトゥビアフォン Koutoubiaphone のピカピカの7インチ盤からコンパイルしたものだったと記憶している。ルワイス・スタイルの楽曲を中心に、モロッコ60年代の多様な楽曲を楽しめる。1枚目の 10トラック目は明らかにハルカ。2枚目にもルワイスの語りっぽいトラックがあるのだが、さて両者の違いはどこにあるのか(またはないのか)と問われると、正直うまく答えることが難しい。

 これら3枚の(60年代の)音楽を聴いて感じるのは土臭さだ。それに対して、ホスィン・スラウイの先取性は際立っている。彼の音楽がどれほどモダンだったかということを改めて強調しておきたい。そんな彼のスタイルが、後年のシャアビの基礎を築いたとは、一体どういう意味なのだろう?

 その一方で、ハルカの語りひとつを比べても、ホスィン・スラウイの方がずば抜けていい! Dust To Digital 盤の解説によると、Kassidat は Poetry(詩、歌詞)を意味するという。そして、50年代、60年代に活躍したモロッコの音楽家には Kassidat を冠する人物がとても多い。モロッコの音楽芸能においては、「詩を語る」ことがそれだけ重要だったということなのだろう。



(続く)








by desertjazz | 2021-04-13 00:00 | 音 - Africa
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