放送大学用のテキスト、仁科エミ+河合徳枝+本田学『改訂版 音楽・情報・脳』読了。(今年20冊目)
聴覚・視覚・脳の構造と機能について詳述した後、音と音楽が脳に与える影響へと話が進む。その中心は大橋力(山城祥二)が発見したハイパーソニック・エフェクトで、100kHzにまでに及ぶ超高周波数音声(ハイパーソニック・サウンド)が脳波α波を誘起し快感をもたらす仕組みについて解説。なので、終始参照される大橋力『音と文明 音の環境学ことはじめ』をコンパクトにした内容と言えるだろう。具体的には、20kHz以下の成分しか持たないピアノの音と比較して、超高周波たっぷりな熱帯雨林、アフリカ狩猟採集民(ピグミー、ブッシュマン)、バリ島のガムランやケチャの音について論じられる。
大橋の理論は現時点でまだ仮説の域なのかと思っていたが、放送大学で取り上げられているということは、ほぼ実証されたと認められたのだろうか(それでも、ハイパーソニック・サウンドの不在が人間の精神に及ぼす悪影響の可能性に関しては慎重に書かれている)。
驚いたのは絶対音感に関する研究。P.73-77 絶対音感を持つ人は左脳が右脳より大きいが、これは左脳が発達したのではなく、右脳が縮小しているのだという。そのため、十二平均律から外れた、あるいは揺らぎのある音楽が楽しめないようなのだ。絶対音感を持つ友人が、サイレンの音を聞いて「音程が外れていて気持ち悪い」と話していたことを思い出した。
この本、今月末に三訂版が出るが、そこまで読み直す必要はなさそう。でも、大橋力の研究の集大成『ハイパーソニック・エフェクト』は高いけれど、買って読もうかな?
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