昨年秋に出た Miles Davis "Kind of Blue" の Analogue Productions UHQR 45rpm / 2LP / Clear Viynl 盤(15000セット限定)を買ってみた。DiskUnion にまだシールド盤があったので(高かったが、自分の「卒業祝い」だと言い訳して。アメリカから直接取り寄せても、本体150ドル+送料100ドルするらしい)。
"Kind of Blue" は 50周年記念版CDやモノラル盤(もちろんリイシュー)でも持っているけれど、一番聴くのは40年以上前に買ったアメリカ盤LP(1982年6月22日に札幌の Tower Records で1440円で購入)。その後に出たCDと比べても音が快活に感じられて、実際こればかり聴いている。今回の UHQR 盤を聴いても、最初は古いLPの方が良く感じられた。オリジナル・マスターテープの劣化は避けられないため、リマスター盤の音質には限界があるからだろう。
そう思ったのだが、少々気になり、手元の4種を冒頭の "So What" を中心に聴き比べてみた。
繰り返し比較試聴して、まず気になり出したのは古いレコードのスピードだった。よく知られている通り、"Kind of Blue" のA面3曲はレコーディングの際録音機のスピードが若干遅く、その分だけ早く再生された演奏がレコード化されてしまった(スピードが狂っていたのはマスター機だけで、サブ機は正常だったものの、音質はマスターより劣るらしい。1990年にマスターテープ2本が発見されるまで、スピードの補正はなされなかったとのこと)。その早いスピードで何百回も聴いてきたものだから、スピード補正した正常な演奏がどことなくトロく聴こえてしまう。しかしよくよく聴くと、導入部の Bill Evans のピアノの音が外れているように感じられる。そして UHQR盤の音に馴染んでくると、これが一番だと思うようになった。これまで古いレコードの音が元気よく感じられたのは、スピードが若干早かったからかもしれない。
UHQR盤はリマスターCDと比べても、音の立ち上がりが鋭く、演奏全体に重厚感があり、ハイハットにも艶があって余韻も豊かだ。ただこうした差はわずか。元々録音の良い作品でもあるので、圧倒的な違いなど生まれるはずはないだろう。今回の UHQR盤は45回転化と透明ヴァイナル(黒いヴァイナルよりも高品質な素材)により音質向上を目指しているのだが、だとすると33回転盤や通常の黒盤と比べると、音の違いはどの程度なのだろうか。このような音の違いは、ある程度ボリュームを上げて聴かないとはっきりしないようにも感じた。拙宅のオーディオレベルではレコードの音を最大まで引き出すには限界もあることだろう。いつかオーディオをグレードアップしてじっくり聴いてみたいとも思う。
それと、 "Kind of Blue" は個人的にはステレオ盤の方が好みだ。3管の定位がはっきりしている方が楽しめるし、トランペットやサックスとハイハットとのバランスが結構変化するので、管とドラムの音が分離している方がストレスなく聴ける。ただし、オリジナルのモノ盤の音がとても良いということも聴く。大愛聴盤の "Kind of Blue" も他のレコードと同様、オリジナル盤の音質がベストなのだろう。機会があれば、その音(ステレオとモノラル)を聴いてみたいものだ。


(※以上、Facebook より転載。)
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