ウガンダの独立レーベル Nyege Nyege Tapes はレーベル設立直後から注目していて、新作が出る度に試聴し、気になった LP は買っている(このレーベルは基本的に DL と LP のみのリリースで、CD は出していない)。音楽としてどれもが特別素晴らしいとまでは感じないが、極めて個性的なサウンドを楽しめる。例えば Lady Aicha & Pisko Crane's Original Fulu Miziki of Kinshasa "N'Djila Wa Mudujimu" などは、独特な D.I.Y. 感というかジャンク感を抱かせる刺激的なサウンドが面白い。
最近出た "Nakibembe Embaire Group (Nakibembe Xylophone Troupe)" も良かった。これはウガンダ東部ブソガ王国 Busoga の小村ナキベンベ Nakibembe の巨大な木琴エンベール Embaire の演奏5トラックと、エンベールとバリのガムランのシークエンスを MIDI 制御したリミックス?を3トラック収録している。エンベールは広場に掘った穴の上に15〜25枚ほどの木の板(鍵盤)を並べて5〜6人くらいの男たちが演奏する。このエンベールのプリミティブなサウンドが実にいいのだ。演奏形態や音色から連想するバリの木琴と比較すれば、巨竹ガムランのジェゴグよりも、小ぶりなアンクルンの音をもう少し太く重くした印象だ。次のベルリンでのライブ映像を観ると、音の各パーツが重なる様子は Steve Reich も連想させる。
1996年にウガンダ滞在中に買った Richsrd Nzita and Mbaga Niwampa "Peoples and Cultures of Uganda" (Fountain Publishers, Kampala 1993/1995)という本で、ブソガとそこの民族バソガ人(ブソガ族)Basoga についてちょっと調べてみた。彼らは首都カンパラなどに住むバガンダ人(バガンダ族)と同じバンツー系で、カンパラより少し東のジンジャ Jinja を中心に暮らす人々だ。ジンジャはナイロビまで続く幹線道路の途上にあり、交通の要衝でもある。Nyege Nyege Tapes の拠点も確かジンジャだったはずで、Nyege Nyege Festival も毎年ジンジャの近くで開催されている。
(Google Map より)
この本にはエンベールとよく似た楽器の写真が掲載されているのだが、その名称はアマディンガ Amadinga となっている。同じブソガ内でも村によって楽器の形態に若干違いがあったり名称が異なったりするのかもしれない。ブソガの楽器としてはパンフルートも紹介されている。1996年にカンパラやジャンジャで様々な民族楽器を目にしたが、タイコも親指ピアノもやたらと大きくて驚いた(ちなみにこの本、ウガンダ各地の楽器や工芸品の写真がたくさん掲載されているので買ったのだが、なぜかそれらについての説明が一切ない)。
ところで Nyege Nyege Tapes のレコードはジャケットデザインの良いものが多いので、なるべく LP を買うようにしている。だが、折角のヴァイナルの利点が活かされていないように思う。高音域に伸びがなく詰まった音に聴こえるし、エンベールにしても超低域の音も響いているものの物足りなく、全体的に中〜低域の迫力に乏しい。これは楽器の音が元々そうなのだというよりも、マイクの選択、あるいはミキシング/マスタリングに改善の余地があるように思うのだが、どうなのだろう?
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(追記)
これらは私がウガンダで買ってきた楽器。手前のものは、サトウキビの花の茎を並べて作った箱の中に木の実を入れたシェイカーで、レユニオンのマロヤ(サレム・トラディションなど)で演奏されるカヤンブ Kayamb やサカキマンゴーさんのライブで見慣れたものと同系統の楽器。ウガンダも民族楽器の多様性に富む国だと思う。
(※以上、Facebook より転載。)
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