Star Band de Dakar のアルバム群を聴き直して、改めて痛感したのは録音の悪さだ。特にヴォーカルが酷い。恐らく長年クラブのステージで使い古してボロボロになったマイクで録音したのだろう。Yakhya Fall も痛切に批判している通り、Ibrahim Kasse はケチってクラブでもライブでも良い機材を用意しなかったようだ。ベースギターの代わりに6弦ギターの弦を2本抜いたもので、"Thiely"、"Senegambia" などの代表曲を録音したことも明かしている。歴史的意味のある録音なのに残念だ(iXotope を使っての修復さえとても無理なレベルである)。
もっとまともな録音はないのだろうか、と思ったワケでもないのだけれど、今回色々調べていて Star Band の録音が Ibrahim Kasse のレコード以外にもあることを思い出した。
ひとつは 1964年頃に録音された Dexter Johnson 時代のもの。"Starband - Superstar de Dakar - International Band featuring Dexter Johnson" (Dakar Sound DSK 017, 1999) に3曲収録されており、恐らく Dexter が Ibrahim にクビにされるより少し前の録音だろう。50年代末に ORS (Radio Senegal) のエンジニアとして働き、その後、自身のクラブ Le Sangomar を経営し、数々の出張録音をこなした Moussa Diallo によるものだ。それだけに録音状態はまずまず。しかもステレオ録音である(正確には、左右に偏った/中抜けした 2ch 録音と言った方がいいだろうか)。
まあ Star Band は時期によってほとんど別のグループであり、これらにしてもその後多くの録音を残した Super Star de Dakar と実質的に同じバンドなので、有り難がる程ではないのかもしれないが。ちなみに収録曲は、"Yallah Yana" (Lead Vocal : Biram and Boubou)、"St. Louis Sierra" (Vo : Amara Toure)、"Bolero Kunta" (Vo : Cheikh M.) の3つで、ヴォーカルとサウンドの多様さを感じさせるものとなっている。
もうひとつは、Mar Seck の "Vagabonde : From Super Cap-Vert to Number One - Unreleased Recordings 1969-1980" (Teranga Beat TBCD 018, 2013) である。Pape Seck 、Mar Seck、Pape Djiby Ba といった Number One 組の布陣による 1973年の録音が聴ける。収録されているのは、"Tira Tira"、"Borom Gal"、"Taba Yo Simo" の3曲。なぜかギターは Yakhya Fall ではなく Mansour M'Boup。Malick Ann は Malick Hann と表記されている。
Ibrahim Kasse の死後に継続した Kasse Star も一応 Star Band だと思い、そのカセットを探したが見つからなかった。その代わりに? ネット検索すると Alioune Kasse et Le Kasse Stars のカセットが数本出てきた。そうか、Mar Seck がバンドを離れた後は、Ibrahim Kasse の息子(とは当人の弁)Alioune Kasse が Star Band を引き継いだのだった(Alioune Kasse は日本ではほとんど話題にならず、近年の活動も伝わってこないので、もう誰も憶えていないだろう)。
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