Star Band 研究(9)

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 Star Band de Dakar のアルバム12枚を久しぶりに聴き終えたところで、バンドメンバーの変遷について調べ直し、改めて検討してみた。まだまだ分からないことばかりなのだが、ひとまず何度目かの中間報告ということで、Dexter Johnson (Tenor Sax, Alto Sax)と Laba Sosseh (Vocal) の2人を中心にもう一度整理してみよう。


 初期の Star Band に関しては、そもそもいつ誕生したのか正確な時期が分からなくなってきた。読むものによって書いていることが異なるからである。

 まず Dexter Johnson の経歴を振り返りながら、Star Band の結成過程について振り返ってみたい。

 Dexter Johnson & Le Super Star de Dakar "Live a l'Etoile" (Teranga Beat TBLP 019) のライナーノートによると、1932年8月26日、ナイジェリアのイバダンに生まれた彼が最初に手にした楽器はドラムだった。それからサックスに持ち替え、地元でいくつかのバンド経験を経た後、多くのミュージシャンが集まるマリのバマコに移る。そこで優秀なミュージシャンにはダカール出身が多いことを知り、今度は 1957年にダカールに移動する。ここでは Shanghai Bar、Guinean Jazz Club、Moulin Rouge といったクラブを渡り歩く。Guinea Jazz Band に在籍していたのは、名前から推測して Guinean Jazz 時代なのだろう。彼のことはすぐに噂になり、早速演奏を観に行った Ibrahim Kasse が気に入って、自分のクラブのバンドのリーダーとして彼を招いたのだという。これも 1957年のことだったらしい。

 この当時のバンド・メンバーがアルバム "Live a l'Etoile" のライナーノートに紹介されている。

 Mady Konate - Leader, Alto Sax
 Bob Armstrong - Trumpet
 Amara Touré - Vocals, Timbales
 José Ramos - Guitar
 Mbousse Mbaye - Maracas, Guiro, Vocals
 Lynx Tall - Tumba, Vocals

 Star Band については「Ibrahim Kasse が 1960年のセネガル独立を記念して結成した」と簡潔に紹介されることが多いが、「1959年に Star Band を結成することを思いついてメンバーを集めた」といった書き方をしているものもある。だが、"Live a l'Etoile" のライナーでは、Star Band の原型が生まれたのはそれより早かったように読める。それは、CD "Starband - Superstar de Dakar - International Band featuring Dexter Johnson" (Dakar Sound DSK 017, 1999) の年表に掲載されている Star de Senui(1956年結成?)のことで、そこに Dexter が加入してリーダーが入れ替わったのかもしれない。

 いずれにしても一連の流れの中で Ibrahim Kasse が 次第に Star Band の構想を固めていったのであろうから、結成年などを厳密に特定することは難しいし、そこまでの必要もないだろう。

 なお、結成当時の名称は単に Starband または Star Band であり、Star Band de Dakar となるのはずっと後だったかもしれない。


 いくつか文献を読み直した上で一番の謎は、Richard D. Shain "Roots in Reverse - Senegalese Afro-Cuban Music and Tropical Cosmopolitanism" (Wesleyan, 2018) に書かれていることだ。

・Laba Sosseh は、1965年(の2月)にガンビアが独立する際の記念イベントで演奏するため Star Band がバンジュルに遠征した時、Dexter Johnson と Ibrahim Kasse にスカウトされた。(P.84)
・Dexter Johnson は 1964年に Star Band から抜けた。(P.60)

 このふたつのことは矛盾していないだろうか。これでは Dexter が Star Band を抜けた後に、Laba をバンドに加入させたことになる。

(付け加えると、当時 Laba Sosseh が在籍していたのは、後年 Super Eagles と名乗る African Jazz だったらしい。)

 Dexter Johnson も Laba Sosseh も初期の Star Band を代表するミュージシャンであり、またその後結成した Super Star de Dakar は2人がリーダーを務める双頭バンドだった。そうしたことから、当然2人は Star Band の同僚であり、Ibrahim と諍いになったことで 1964年に脱退した2人が Super Star を結成したものだと思い込んでいた。

 しかし、いくつかの疑問点は留保して、Dexter が Star Band を脱退したのが 1964年、Laba が加入したのが 1965年だったとするならば、話は幾分整理しやすくなる。つまり2人が Star Band に同時に在籍していた期間はなかったと考えるのだ。Laba は 1943年3月12日生まれなので、65年に加入したとしてもまだ21歳か22歳だ。

 実は Dexter Johnson 時代の Star Band の録音に Laba が歌っているものがないことに気が付き、不思議に思っていたのだけれど、これでその疑問も消える。この連載記事の前回(第8回)の中で、始めは「ひとつは 1964年頃に録音された Dexter Johnson と Laba Sosseh 時代のもの」と書いたのだが、どうやらそうした時期がなかったらしいと思いついて、その部分を修正したのだった。


 いつくかの文献を参照する限り、Dexter Johnson は 1964年に Star Band から脱退した(どうやら Ibrahim と揉めてクビにされたらしい)。そして仲間たちと新たなバンドを結成するのだが、Star Band とは名乗れなかったために Super Star de Dakar という名前にしたようだ。

 一方の Laba Sosseh も 1965年または66年に Star Band を抜け、すぐに Super Star に加入している。彼らは A l'Etoile というクラブで毎晩演奏し続けた。ダカールの音楽シーンは、本当に「星」が好きな人たちばかりだ。

(Etoile は星を表すフランス語。Star Band、Super Star de Dakar、Star Number One、(Super) Etoile de Dakar、Etoile 2000。Star Band から派生したバンドはこのように星にこだわる名前ばかり。Star Number One に至っては、最初の名前は Star Band 1 だった。)

 Dexter Johnson が脱退したのは、Laba が加入した直後の 1965年だったならば話の辻褄が合うのだが。そう思いながら、さらに資料に当たってみた。すると、充実したコンピレーション 2CD "Afro Latin Via Dakar" (Syllart, 2011) のライナーノートを読み直して、フローラン・マッツォレーニ Florent Mazzoleni が「1965年に、2人は別の有名ダンスホール l'Etoile で演奏するため脱退した」といったように書いていることに気がついた。そうでなければ事実関係に整合性が取れないため、個人的にも2人は短期間 Star Band で活動した後、1965年に脱退した可能性が高いと考えている。


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 1966年には Dexter も Laba も既に Star Band を去っていたので、やはりこの頃バンドは結構混乱していたようだ。以下、Super Star などでパーカッション奏者として活動した Salla Kasse のインタビューに基づいて整理してみよう。

 1966年、Le Sabor から Xalam に移った Salla Kasse は、今度は Laye Thiam に誘われて Cheikh Tidiane Tall と一緒に Star Band に加入した。だとすると 60年代の中頃は Laye Thiam や Cheikh Tidiane Tall が Star Band の主軸だったと考えられる。これで、Star Band de Dakar の "Vol.5"、"Vol.6"、"Vol.7" のA面は、この頃の録音である可能性が高くなった。

(*この記事を書き終えて何度か読み返している間に、Florent Mazzoleni のライナーに気がつき、また修正していたら、今度は "Senegal 70" (Analog Africa AACD 079, 2015) のブックレットに掲載された Laye Thiam 関連のインタビューを見つけた。それによると、Laye Thiam が Star Band に在籍したのは 1965年からの5年間だった。その後、自身のバンド Orchestre Laye Thiam を結成するために Star Band を脱退。ファースト・アルバム(Star Band "Vol.5" のことと思われる)は 71年または72年に録音(放送局のスタジオで行った)。セカンド・アルバム(同じく "Vol.7" のA面だろう)は 1974年頃にリリースされ、同じ年に Laye は生まれ故郷のコンゴに戻ったという。これを読む限り、1969年以降の Saf Mounadem との関係性が分からなくなるのだが、Laye Thiam が Saf Mounadem のメンバーであったのではなく、Laye Thiam たちと Orchestre Saf Mounadem とが交互に Miami に出演する形態だったのかも知れない。いずれにしても 1965年に始まる彼らの Ibrahim Kasse との関係が、Laye Thiam、Cheikh Tidiane Tall、Idy Diop、そして Saf Mounadem のレコーディングに繋がったと考えられるだろう。)

 Salla Kasse は Star Band に2年間在籍し、68年に Xalam に戻るが、すぐに Super Star へ移った。この頃に最古参のひとり Amara Touré もバンドを離れたというから、Star Band は分裂状態だったのだろう。それで生じた穴を埋めたのが、Orchestre Saf Mounadem(Orchestre Baobab)だったワケだ。これで 1960年代の Star Band の遍歴がほぼ明らかになった。

(ハラム Xalam というバンドはふたつある。ここで登場した Xalam は、セネガル音楽がアフロキューバンのコピーからンバラへと進化する過程で重要な役割を果たした Idy Diop も在籍したバンドで、70年代後半以降にジャズ・フュージョン系のサウンドで人気を博した Xalam とは一応別グループとみなされいる。そのため、大名盤 "Daïda" (Musiclub – LPX MUS 005, 1975) までを(あるいはその前までを?) Xalam (un) と呼んで、後年の2番目のバンド Xalam (2) とは区別している。)


 さて、その後の Super Star なのだが、1969年に Laba Sosseh はコートジボワールのアビジャンへ向かう。当時アビジャンでも Super Star の評判が高まっており、彼は何らかのオファーを受けたようなのだ。そこで、密かにパーカッションの Aziz Ndiaye、Pacheco (Salou Dieye) らを引き連れ、オリジナルの Super Star だと偽ってアビジャンに移動した。これはリーダーだった Laba が利益を独り占めするための行動で、彼は Super Star をぶち壊したと、Salla Kasse は痛烈に批判している。1969年8月に録音された "Live a l'Etoile" のクレジットには Laba の名前がないので、この時点で既に Super Star から離れていたのだろう。

(Laba がアビジャンで結成したのは Super International Band で、アビジャン出身で Guniea Band から最初期の Star Band に参加した Amara Touré もそこに加わったとも書かれている。)

 一方、Salla Kasse, John Gomis, William ら残されたメンバーたちは、Laba のポジションに収まるシンガーを探し、オーディションで Maissa Ngoma を採用する。そして 1969年8月にマリの Kaye 経由でアビジャンへ向かった("Live a l'Etoile" の素晴らしいライブ録音はギリギリのタイミングで残されたことになる)。

 昔、Dexter Johnson が Laba Sosseh に続いてアビジャンに移動したことを読んだ時には、Dexter は今度は別のマーケットで Laba と一旗あげようと考えて彼を追ったのだと思った。しかし事実は全く違っていたようだ。もしかすると Dexter たちは、自分たちこそが本家だという自負と意地があって Laba と同じアビジャンに拠点を移したのかもしれない。実際、それ以降 Dexter と Laba が一緒にプレイすることは決してなかったという。

 その後、Dexter はアビジャンで Daniel M.J.Cuxac の助力を得て、ニューヨークで "Estrellas Africanas" を録音したり、Manu Dibango や Boncana Maïga とバンドを組んだりする。そして 1981年に死去。それまでの間、セネガルに戻ることは一度もなかった。


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 一方の Laba Sosseh なのだが、Super Star を離れて以降については、アビジャン時代のこと、77年にニューヨークに飛んだこと、その後 2007年に亡くなるまでアメリカを拠点に活動を続けたことが多く語られる。しかし、彼の活動範囲は意外と広かったようだ。

 まず 60年代後半から70年代前半の間に Laba Sosseh y Su Conjunto、Laba Sosseh y Super Conjunto、Super International Band、Issa Cissoko との Laba Sossseh et son Orchestre Vedettes Band などの名義でレコードをリリースしている。最後の2つのバンドは合わせて半年しか活動が続かなかったようだ(Issa Cissoko は Saf Mounadem に加入する前には Vedettes Band を率いていたらしい)

(先に引用した "Afro Latin Via Dakar" の Florent Mazzoleni によるライナーには、「1966年に2人はアビジャンに移り住み、Super International Band を結成し、Aziz、Pape Fall ら、さらにはアイボリーコーストのミュージシャンたちを採用した」といったように書かれている。Super Star がアビジャンに移って、より International 化したということか? 2人がわざわざ別名義を名乗った理由はこのことだったのかも知れない)。

 1972年に(再度?)アビジャンに移動したという記述もある(これについては確証がないのだが)。N'Dardisc のシングル盤をチェックすると、それぞれ 1970年と 1974年に録音したと考えられるものがあった。それらのことから、彼は 1970年前後にはアビジャンとダカールを往復していたと仮定することができないだろうか。1969年以降のアビジャン時代のことがほとんど伝わってこないのだが、所詮 Dexter ら中心メンバーの大半を置き去りにしてきたのだから、音楽的に成功しなくても当然だっただろう。それでダカールに戻り、Super Star 時代からレコードを出している N'Dardisc での制作を続けたように思える。

 また、今さら Dexter に頭を下げて Super Star を復活させるワケにもいかず、それで Star Band にも復帰したのではないだろうか。少なくとも 1970年代初頭にはダカールにいて、Star Band でも活動していたと考えるのは自然なことのように思える。もしそうであれば、Doudou Sow、Mar Seck ら(Number One 組)と歌い分けるアルバム Star Band de Dakar "Vol.3"、"Vol.4" の存在に納得がいき、これらはやはり 70年初頭の録音だったことになる。

 この記事の始の方で取り上げた Richard D. Shain の "Roots in Reverse" では、Laba Sosseh について8ページ強割かれている(PP.83-91)。それにも関わらず、65年に脱退した以降の Star Band との関係については全く触れられていなかった(と記憶している)。しかし三度 Florent Mazzoleni によるライナーから引用すると「1973年に Star Band に復帰した Laba Sosseh」ということが書かれている。やはりそうだったのだ(この記事を確証できる資料を探そう)。Florent は「Star Band のファースト・アルバムは 1971年」とも書いている。

 Laba のその後の動きも結構活発で、その辺りについてもある程度整理できてきた。調べてみると、世界中あちこちへ飛び回って落ち着かない。故郷のバンジュルを離れてからは、美味しい話があるとすぐに飛びつき、まるで渡鳥のような生涯だったように見える。

 Dexter Johnson も Laba Sosseh も優秀なミュージシャン/アレンジャーとして名門バンドを支えた。しかし、いつも物静かで紳士的だった Dexter に対して、Laba はより活動的で、時には仲間を裏切ることも厭わない積極性を持った人物だったのかもしれない。何と言っても Star Band のガンビア公演の際に自ら売り込んで歌ったくらいなのだから(今回も長くなったので、詳しい内容については次回にしよう)。


 それにしても、久しぶりに Super Star de Dakar の録音を色々聴いたが、いいものが多いなぁ〜。


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(追記:Laba Sosseh y Su Conjunto や Super International Band に関して誤りが判明したので、その部分を修正しました。2023.09.24)






by desertjazz | 2023-09-23 06:00 | 音 - Africa

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