New Discs : South African Piano

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 このところ、南アフリカ共和国のジャズを聴くことが増えている。それは、軽やかなサウンドが心地よいこともあるが、近年良質なリイシューが続いていて、それらを買い続けているからでもある。

 南アのジャズといえば、1964年の欧州ツアー中に亡命し、その後ロンドンのジャズシーンで大活躍した The Blue Notes の面々が真っ先に思い浮かぶ。Chris McGregor (piano)、Mongezi Feza (trumpet)、Dudu Pukwana (alto saxophone)、Johnny Dyani (bass)、Louis Moholo-Moholo (drums) といった名プレイヤーばかりだ。Dollar Brand (piano) や Hugh Masekela (Trumpet) など、アパルトヘイトから逃れてヨーロッパやアメリカで活動したミュージシャンたちも南ア・ジャズの代表格だろう(2年前に出た Dollar Brand 最初期の録音をコンパイルした "Plays Sphere Jazz" は、モンクなどからの影響が色濃い楽しい作品だった)。

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 一方で、アパルトヘイト時代にも南アに留まり続け、地道に活動したミュージシャンたちも多い。そうしたミュージシャンたちの録音の発掘/リイシューが着々と進められ、いずれもが良くて歓喜している。

 そのような南ア・ジャズ盤の中で、最近また聴いているのは、ギデオン・ンクシュマル Gideon "Mgibe" Nxumalo とテテ・ンバンビサ Tete Mbambisa という2人のピアニストの関連作品群である。




 ギデオン・ンクシュマルは、1929年ケープ州の生まれ。彼のことは 1991年にリイシューされた "Jazz Fantasia" (Kippie Moeketsi や Dudu Pukwana も参加したライブ盤)を発売直後に買って知った。そのアルバムが 2019年に再びリイシュー。さらにセカンド・アルバム "Gideon Plays" も 2021年にリイシューされた。彼のメイン楽器はピアノであるものの、マリンバなども演奏しているところも面白い。

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 彼のリーダーアルバムはこれら2枚だけと思っていたら、"Early-Mart" というもう1枚があり、これも最近リイシューされていることを知って取り急ぎ入手して聴いている。このアルバムは、The Blue Notes でも活動した後に亡くなった音楽仲間のドラマー Early Mabuza に捧げられたものなのだが、ギデオン・ンクシュマル自身もこの作品が録音・リリースされた 1970年に亡くなっている。

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  "Jazz Fantasia" (Renown, 1962)
  "Gideon Plays" (JAS Pride, 1968)
  "Early-Mart" (Soultown ,1970)



 1942年生まれのテテ・ンバンビサは、1960年代に Dudu Pukwana や Johnny Dyani らと共演してきたプレイヤー。彼がメンバーだった The Soul Jazzmen の "Inhlupeko Distress" (1969) が 2015年にリイシューされ、それ以来愛聴している。

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 彼は 1970年代に "Tete's Big Sound" と "Did You Tell Your Mother " というリーダーアルバムを2枚出しているのだが、ありがたいことにそれらもリイシューされた。

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 そして今度は、これら2枚の間の 1978年になされた未発表?録音がまとめてリリースされたものだから、またびっくり! その2枚組アルバム "African Day" を先日入手して楽しんでいるところだ。

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 テテ・ンバンビサの作品を確認しようと思って Discogs を検索したところ、彼のアルバムが近年もう2枚出ていることを知った。どちらもヨーク大学の助力のもとで制作されたものらしいのだが、プレス数が少なかったからなのか、現在では入手不可のようだ。

 それでも、1枚目の "Black Heroes" はデジタル版がネット販売されているのを見つけて、早速ダウンロードして聴いたのだが、これが実にいい。'Black Heroes' や 'Stay Cool' といった長年のレパートリーをピアノ・ソロで演奏していて、例えば Bugge Wesseltoft の "Songs" や Keith Jarrett の "The Melody At Night, With You" のを連想させるような穏やかさなのだが、そこは南ア・ジャズなので弾むような節回しが魅力だ。テテは一人静かにスタジオでピアノに向かって演奏したのだろうと思ったのだが、雰囲気の良い空気が伝わってきて、その中でかすかに響く人の声が混じる。それで、これがライブ録音であることに気がついたのだった。聴いてみたいので、もう1枚の "One For Asa" もリイシューされないだろうか?

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 そのテテさん、80歳を超えた今もお元気らしい。時々ライブも行っているようで、近影もネットで拝見することができる。

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 "Tete's Big Sound" (The Sun, 1976)
 "Did You Tell Your Mother" (The Sun, 1979)

 "Black Heroes" (JISA, 2012)
 "One For Asa" (JISA, 2017)

 "African Day" (As-Shams Music/The Sun, 2024)



 ピアノ奏者以外にも目を向けると、Winston "Mankunku" Ngozi (tenor sax) の名盤 "Yakhal' Inkomo" や、そのマンクンクも参加した The Chris Schilder Quintet Featuring Mankunku "Spring" がリイシュー。Basil Mannenberg Coetzee (tenor sax) や Kippie Moketsi (alto sax) の参加作も As-Shams Music/The Sun から次々とリイシューされている(Pat Matshikiza & Hippie Moketsi "Shona!"、Pat Matshikiza "Sikiza Matshikiza"、Lionel Pillay & Basil Mannenberg Coetzee "Shrimp Boats" など)。

 Matsuli Music などからリイシューされているこうした南ア・ジャズのアルバムは、ほとんどがヴァイナル・リリース。ジャケは丁寧な作りで、レコード盤の厚いものが多いことはいい。その一方で、クレジットが記載されていないものの多いことは不満だし、まれに傷盤(これは Matsuli 盤ではない)を手にして品質管理ができていないことにもガッカリ。

 そして、とにかく高い! 円安のせいで、それがますます加速している。「高すぎだ」とぼやき続けながらも何とか買い続けているのだけれど。

 Tete Mbambisa の "Did You Tell Your Mother " は内容がとても良いものの、元々持っていなかったのでフィジカルが欲しい。しかしリイシュー盤ですら出た時に 6000円くらいしたのでさすがに諦めたのだが、今は1万円出しても買えない。やっぱり買っておくべきだったかと思いつつ、ストリーミングで聴いている。

 渡英組のリイシューも着々と進んでいて、Dudu Pukwana などの主要ミュージシャンをフォローするだけでも一苦労だ。変わったところではイギリスのライター Chris Searle の最新評論集 "Talking The Groove: Jazz Words from the Morning Star" (Jazz in Britain, 2024) の付属 CD(2枚セット)に Chris McGregor の 1967〜1970年の未発表録音がたっぷり収録されている。共演ミュージシャンは、Mongezi Feza、Dudu Pukwana、Dave Holland、Malcolm Griffiths、Mike Osborne、John Surman、Louis Moholo、Harry Beckett、Nick Evans、Alan Skidmore、Harry Miller などという豪華さ(John Stevens、Kenny Wheeler、Trevor Watts、Tubby Hayes、Stan Tracey らの未発表録音も収録)。ただしいずれも個人蔵の音源からの復刻で、発売できるクオリティーには程遠いのが残念。

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(南ア・ジャズのリイシュー、ピアニスト以外も取り上げ始めるとキリがないので、そうした作品の紹介はまたいつか改めて。)



 リイシュー続く南アのジャズ。それを後押ししているのには、現代の南ア・ジャズが活況を呈していることも大きいだろう。

 その筆頭はンドゥドゥゾ・マカティーニ Nduduzo Makhathini だ。大手ブルーノートと契約した1作目 "Modes Of Communication: Letters From The Underworlds" も良かったが、続く "In The Spirit Of Ntu" の素晴らしかったこと。近年のジャズの中でも傑出した1枚だと思う。

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 そのンドゥドゥゾ・マカティーニがまもなく新作をリリースするので楽しみで仕方ない。彼は今話題の Shabaka Hutchings 改め Shabaka の最新作にも参加している。このアルバムもとてもいい。







by desertjazz | 2024-04-19 14:00 | 音 - Africa

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